健康診断や人間ドックの尿検査によって何がわかるのでしょうか。腎臓の病気は自覚症状が乏しく、健康診断や人間ドックの尿検査で偶然見つかることが多いです。所見が見られたら、早めの対処が必要です。今回は、尿検査を受ける際の留意点や受け方、尿検査の項目や結果の見方、どのような病気の可能性があるのかなどについて解説していきます。
知っておきたい尿検査のこと
尿検査で何がわかる?
尿検査は、腎臓などの泌尿器の病気や糖尿病および尿中に糖が出やすい体質の有無(血糖の状態を推測する、尿中に含まれる糖の程度)を調べる検査です。
主に尿の中に含まれる糖、蛋白(たんぱく)、潜血の有無やその程度を調べますが、尿比重、尿沈渣(にょうちんさ)など詳しい項目が含まれていることもあります。
通常、糖、蛋白、潜血は、尿中には検出されない成分です。陽性であっても自覚症状が出にくいのが特徴で、病気の早期発見や病気の程度を推測するのに役立ちます。
尿はいつ採るべきでしょうか?
朝起きてから、すぐに採ります。あらかじめ、採尿容器を自宅に送付されていることが多いですが、採り忘れがないように、トイレなどに準備しておくとよいでしょう。また、採り方の手順は、前日までに確認しておくことをお勧めします。
採尿は朝イチじゃないとダメですか?
採尿の種類は、随時尿、早朝尿があります。どちらでも検査は可能です。採尿の方法は、医療機関の判断に委ねられていて、医療機器で採取することもありますが、便宜上、自宅で採尿することが多いです。
早朝尿は、成分が濃縮されている尿を検査することができ、感度がよいのが特徴です。早朝尿は、食事や体を動かしたときの影響を受けにくく、蛋白などの異常を検出しやすくなります。
随時尿は、一般的な採尿方法で、任意の時間に採る尿です。雑菌などが混入しにくいため、新鮮な尿を採取することができます。
飲んだ水分は何分で尿になりますか?
水分を飲んでから、尿として排泄されるまで6時間程かかります。
水分は、老廃物を体外に出す役割があります。尿以外にも、汗をかかなくても、不感蒸泄(自然に皮膚や呼吸から蒸発する水分)により体の水分が失われています。季節に関わらず、こまめに水分を補給するとよいでしょう。喉が渇いたときには、体の水分は足りなくなっているため、喉が渇く前に少しずつ飲むのが、上手な水分補給の秘訣です。
尿検査の前日に気を付けることは?
ビタミン剤や栄養ドリンク、カロリーのある飲料などは、尿の成分に影響しやすいため、控えるようにします。激しい運動も控え、水や麦茶などの水分を十分にとります。また、寝る前には排尿を済ませ、膀胱を空っぽにしてお休みください。
また、前日の夕食は、脂質の少ないたんぱく質や野菜のおかずに、軽めの主食をとり、検査予約時間の10時間前までに食事を済ませておきましょう。飲酒も控えるようにしましょう。
生理中(月経中)の尿検査はどうする?
予定通り検査を受けることは可能ですが、月経中および月経前後の数日は血液が混入しやすいため、潜血反応は陽性となる可能性が高くなります。また、尿蛋白も陽性になることもあります。
健診機関によって、判断が異なるため、あらかじめ問い合わせておくとよいでしょう。
尿検査のやり方
広口の採尿容器を用いて、出始めの最初の尿と最後の尿は捨てて、清潔な中間尿を採ります。
出始めの尿は、尿道以外からの細菌や分泌物などが混入しやすく、検査結果に影響することがあります。
検尿の入れる量は?
少量で十分ですが、25 mL以上必要です。検尿の容器に必要量が記されています。
検尿の保存方法は?
時間の経過と共に、雑菌が繁殖してしまうため、密栓の容器に入れ、涼しい場所(冷暗所)に保管します。通常、採尿から3時間以内であれば、検査結果への影響はありません。
尿検査の結果の見方
尿検査の項目と基準値、異常があった場合に考えられる病気について解説します。
尿蛋白
【基準値】陰性(-)
尿中の蛋白の有無や量を調べる検査です。
腎臓の異常の有無を判断します。高血圧や糖尿病が原因で腎臓に負担がかかり、蛋白尿が出ている可能性もあるため、他の健診結果も確認することが大切です。
異常の際に考えられる病気は、腎炎などの腎臓の疾患、膀胱・尿道・尿管・前立腺の炎症などの尿路の疾患の他、発熱・激しい運動・妊娠時にも陽性に出ることがあります。
疑陽性(±)および陽性(+)は【要注意】で再検査が推奨されます。2+以上は【異常】で精密検査が必要です。
尿糖
【基準値】陰性(-)
尿中の糖の有無や量を調べる検査です。一般的に血糖値が 160-180 ㎎/dLを上回ると、尿糖が出るため、高血糖の可能性が高いことを意味しています。
また、腎臓で糖が再吸収する働きが低い体質の人は、血糖値が基準値以下であっても、尿中に糖が出ることがあります。これを腎性糖尿と言いますが、この場合、特別な治療は必要としません。(健診などで、定期的に経過を診ていく必要はあります。)
疑陽性(±)は【要注意】、(+)以上は【異常】で再検査や精密検査が必要です。
尿潜血
【基準値】陰性(-)
尿中に血液が混入しているかを調べる検査です。陽性の場合は、腎臓や尿道からの出血を意味しています(尿の色が赤くなくても、赤血球が混じっていることがあります)。
ただし、大量にビタミンCを服用した場合は疑陽性(±)となることもあります。
異常の際に考えられる病気は、膀胱や腎臓などの炎症、腎臓や尿管などの結石、泌尿器系の悪性の病気の他、激しい運動・生理中はもちろんのこと、生理前後2~3日も陽性になる可能性があります。
アルコールは出血を助長させるため、陽性を指摘された場合は、飲酒は避け、早めに再検査や精密検査を受けるようにしましょう。
疑陽性(±)および陽性(+)は【要注意】で再検査が推奨されます。2+以上は【異常】で精密検査が必要です。
尿沈渣
尿に含まれる成分を顕微鏡で調べる検査です。成分の量や種類によって、尿蛋白や尿潜血の原因を調べる判断材料となります。
【基準値】
- 赤血球:0~4個以下/毎視野内
- 白血球:0~4個以下/毎視野内
- 上皮細胞:少量/毎視野内
- 結晶:少量/毎視野内
【異常の場合に考えられる病気】
- 赤血球が多い場は、腎臓など尿路系の炎症、結石、腫瘍、出血性の内科的な疾患
- 白血球が多い場合は、尿路系の炎症や感染・上皮細胞が多い場合は、腎臓など尿路系の炎症、腫瘍など
- 円柱細胞陽性の場合は、腎炎などの腎疾患の目安
- 結晶が多い場合は、結石、痛風など
- 細菌が検出されれば、尿路感染症
- 原虫が検出されれば、性行為感染症
尿比重
【基準値】1.01~1.03 ※異常ない場合でも多少変動あり
体の水分量を一定に保つために、腎臓は薄い尿や濃い尿を作っています。働きが悪くなると比重を保つことができなくなります。
【異常の場合に考えられる病気】
- 低比重:尿崩症(にょうほうしょう)や慢性腎炎などの他、多量の水分摂取
- 高比重:心臓の病気や糖尿病、ネフローゼ症候群などの他、発熱、下痢などの脱水の場合
健康診断の尿検査で異常(再検査が必要)と診断されたら?
過度の疲れや激しい運動などにより、一時的に尿検査に異常がみられることもありますが、尿検査の結果で精密検査や再検査が必要と判断された場合は、早めにかかりつけ内科または泌尿器科(腎臓内科)などの医療機関で相談することをお勧めします。
この記事を書いた人
小田部 淳子
看護師として外科病棟勤務。その後保健師として銀行の健康管理センターにて産業保健、健康管理センターにて人間ドックおよび健診後の保健指導、その後出版社にて健診後の文書指導、特定保健指導、糖尿病重症化事業、電話およびWeb健康相談、電話相談運営、社内研修企画運営、健康関連原稿の業務を歴任。現在、特定保健指導および原稿の業務に携わっている。
【保有資格および研修終了】
- 看護師
- 保健師
- 養護教諭二種免許
- 一種衛生管理者
- 産業保健指導者、ヘルスケアトレーナー
- ピンクリボンアドバイザー初期認定
- 東京糖尿病療養指導士
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