「隠れ糖尿病」「血糖値スパイク」を防ごう【症状と予防法】

健康診断や人間ドックで血糖値に異常がない方でも、知らず知らずのうちに食後の血糖値が異常に高くなり(血糖値が上昇し尖った釘のように急激に上がる)、その後、血糖値が急降下する、またそれに伴う不快な症状が起こることがあるのをご存知でしょうか。

こういった現象は、健康診断で行われる糖尿病の検査(空腹時血糖値やHbA1c)では食後の血糖値を調べていないこともありますが、検査結果が正常と判定され、見逃されてしまうことがあります。

このような現象は「隠れ糖尿病」や「血糖値スパイク」と言われています。

では、この隠れ糖尿病を放置しておいてよいのかと言うと、そうではありません。長期的にこの状態が続くことで、血管を傷つけ、動脈硬化を進めてしまい、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などのリスクを高めてしまうからです。このほか、がんのリスクや認知症のリスクも上げることが知られています。

痩せているから大丈夫ということもありません。糖尿病家系の人や糖尿病予備群と言われた人、血糖値が気になる、糖尿病には絶対なりたくないと思っている人、食後の眠気が強いなどの症状がある人は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。

目次

血糖値スパイクになりやすい人の特徴は?

血糖値スパイクを起こしやすい生活習慣や症状があるかチェックしてみましょう。当てはまる項目が多いほど、血糖値スパイクを起こしやすい、または起こしている可能性があると判断されます。

  • 食後の眠気やだるさがある
  • 食事を抜くことがある
  • 早食いで、食事時間は10分以内である
  • パンやごはん、麺類などの主食を一人前以上食べる
  • 甘いものをよく食べる
  • 甘い飲み物をよく飲む
  • ストレスが多い
  • 睡眠不足が続いている
  • 血縁者に糖尿病の人がいる

血糖値スパイクの場合、起こりやすい症状は?

食後に眠気を感じる人は、食後に高血糖を起こしている可能性があります。その他、疲れがたまっている人や日ごろから寝不足の人は、その区別がつかないこともありますし、食後は消化管の働きが活発になるため、副交感神経が優位となり眠気が出やすくなります。

食後の急激な眠気、だるさ、頭痛、気持ちが不安定になるなどの症状がある一人は、できるだけ休養や睡眠を心がけ、血糖値を急上昇させやすい食べ方や食べ物をできるだけ避けてみましょう。こういった症状を起こさないように工夫すると同時に、症状の変化をよく観察してみます。

症状が改善してくれば、血糖値スパイクを起こしている可能性があります。自己判断が難しいこともあるので、心配な人は、一度糖尿病を専門とする医療機関へ相談することをお勧めします。

血糖値スパイクを防ぐには?

1. 健康的な食事習慣

食事を抜かない

食事を抜いた後の次の食後は、血糖値が急上昇しやすくなります。血糖値を下げるインスリンが通常より多く分泌されます。インスリンが多く分泌されると、今後は急激に血糖値が下がってしまい、この高低差が血管を傷める原因となります。3食規則正しく食べるようにしましょう。

早食いは避け、食事時間は20分以上かけて食べる

早食いはできるだけ避け、噛む回数を増やすことで、食べ過ぎを防ぎ、血糖値スパイクを抑えることが可能です。また、食べる順番も重要です。野菜類や汁物からゆっくり食べ始める、野菜類がないときは、たんぱく質から食べ始めるようにして、主食は後回しにするとよいでしょう。ゆっくり食べるためにも、野菜を固ゆでにする、大きめにカットして調理することもお勧めです。

パンやごはん、麺類などの主食(炭水化物の摂取量)は、一人前を目安にする

1回に食べる糖質摂取量が多くなると、血糖値は急上昇しやすくなります。食べる順番と併せて、糖質摂取量を抑えるようにしましょう。食事の全体量についても注意が必要です。

主食を抑えることで、おかずの量を極端に増やすと、カロリーオーバーになり、体重にも影響します。昔から言う、一汁三菜(主食となるご飯に、汁物、主菜と副菜2品)をイメージするとよいでしょう。

また、果物は適量とるようにします。果物は、血糖値を上げやすいと思われがちですが、果物には食物繊維、ビタミンC、カリウムなどが豊富で血糖値の上昇を抑える成分も含まれています。一日の適量と言われる100g~200g程度(みかんなら2個)が推奨されています。

菓子類などの間食はできるだけ控える

甘い菓子類以外にも、糖質量の多いせんべい類を空腹時に食べると、血糖値は急上昇します。間食で取る糖質の目安は、20g以内です。栄養成分表示に記載があるため、確認するようにしましょう。

甘い飲み物は飲まず、原則カロリーのないもので水分を補給する

糖質の多く含まれる甘い飲料は、吸収が非常に早く、短い時間に多くの糖質をとってしまうことで、血糖値が急上昇します。100%の果汁や栄養ドリンクも一見、身体に良さそうなイメージですが、栄養成分表示を確認すると、1本当たり糖質量が20gほど含まれているものも少なくありません。

血糖値スパイクを起こしにくい食べ物は?

ベジタブルファースト(野菜、海藻類、キノコ類)はよく知られていますが、食事の10分くらいまでに、素焼きナッツをひとつまみ食べる方法もあります。アーモンドやクルミなどの素焼きナッツは、血糖値に影響が少ないため、間食としてもお勧めです。

70%以上のハイカカオチョコレートも血糖値の上昇を緩やかにします。ただし、カロリーが高いため、ハイカカオチョコレートは個包装のものを1~3枚程度に抑えるようにします。

ヨーグルトや牛乳などに含まれるホエイプロテインは、血糖値の上昇を抑えてくれます。ヨーグルトに砂糖が含まれているものが多いため、カロリーや糖質を考慮して、無糖および脂肪の控えられているものを選択するようにしましょう。牛乳の場合は、低脂肪乳か無脂肪乳がお勧めです。

カテキンの含まれる緑茶も取り入れてみましょう。

2. ストレスの管理

ストレスは血糖値と関連あるの?

ストレスと血糖値は、関連があることが分かっています。

過度なストレスにより、飲み過ぎた、食べ過ぎたという経験は、少なからず誰にでもあると思います。ストレスを食べることで発散すると、血糖値への悪影響があることは言うまでもありません。

また、血糖値を上げるホルモン(グルカゴン、コルチゾール、アドレナリンなど)は、ストレスによって分泌が高まり、逆に血糖値を下げるホルモンの働きが悪くなるため、悪循環をきたします。血糖値を下げるホルモンは、インスリンの1種類だけですが、上げるホルモンは多く存在しますので、ストレスコントロールは非常に重要なポイントです。

ストレスは、飲食で解消するのではなく、体を動かすことで、上手に発散させると、睡眠の質も良くなり、血糖値の安定につながりやすいでしょう。

3. 睡眠時間

血糖値と睡眠との関係は?

睡眠や休養をできるだけとり、疲れを溜めすぎないようにすると血糖値の安定につながります。

睡眠時間には個人差がありますが、心身の疲れを解消するために、6~8時間は必要と言われています。過度の寝不足が続くと、食欲を増すホルモン(グレリン)が上昇し、食欲を抑えるホルモン(レプチン)の働きが低下します。また、起きている時間が長くなると、空腹を感じる時間や食べる機会が増えるため、血糖値のコントロールには、適さない環境となってしまいます。

できるだけ、早めの就寝を心がけ、連続して寝不足にならないように、スケジュールをコントロールしましょう。

4. 適度な運動と体重管理

血糖値スパイクを改善させる運動は?

血糖値は食後30分から1時間頃にピークを迎えます。このタイミングで身体を動かしていくと、食後の血糖値の上昇がゆるやかになり、血糖値スパイクを和らげることができます。

たとえば、20分程度の早歩きなどの有酸素運動はお勧めです。この他、その場で足踏みする、動作を機敏にする、かかと上げ、腿上げ、ストレッチ、ラジオ体操など、自宅で手軽に行えるものでもよいでしょう。座っている時間を短くするようなイメージで、動いてみましょう。

また、筋肉量を増やすトレーニングもお勧めです。昨今、安価なトレーニングジムも増えてきていますが、自宅で行えるスクワット、腕立て伏せ、腹筋運動、プランク、ゴムチューブやダンベルを使った体操、腹筋ローラーなどでも十分効果が得られます。体力や体調に合わせて、徐々に負荷や回数を増やす、時間を伸ばすようにして、筋力アップを図りましょう。

過体重や肥満は糖尿病のリスクを高める要因となるため、適切な体重を維持する事も大切です。

5. 職場での血糖値スパイクを防ぐ対策

血糖値スパイクを起こさない食習慣とくにランチの取り方に工夫が必要です。炭水化物に偏った食事は避ける、ご飯や麺の大盛りを避けて、野菜とたんぱく質の揃っているバランスのよい食事をとるようにします。

血糖値スパイクを起こすと眠気や頭痛など、仕事に支障を感じる症状が起こることがあります。この場合は、過剰にならない程度のカフェイン(コーヒー・緑茶などの飲料やカカオ70%以上のチョコレート)を取る、冷たい飲料を飲む、ストレッチなどで身体を動かす、可能であれば15分程度の仮眠をとるなどで、リフレッシュを図りましょう。

職場でルールを作り、菓子などのお土産を配らないようにすることも対策の一つです。甘い菓子類は、肥満の原因になり、血糖値を急上昇させる要因です。もし配る場合は100kcal程度の低糖質や低カロリーのものを選ぶようにします。

夏場にスポーツ飲料や甘い飲料を配布する職場もありますが、大汗をかくような環境でなければ、スポーツ飲料や甘い飲料を配布しないようにします。また、自販機にカロリーのある甘い飲料を置かないようにする、置く場合は、低糖質のものに限定するなど、職員への体への配慮も必要です。

仕出し弁当がある場合、ヘルシー弁当を準備する、ご飯の量を調整できるような配慮も大切です。

  • 菓子などのお土産を配らない。配る場合は100kcal程度の低糖質や低カロリーのものを選ぶ。
  • 職場で甘い飲料を配布しない、自販機に甘い飲料を置かない、置く場合は、低糖のものを最低限とする。
  • 水分の取り方を周知する。たとえば、飲料別の糖質や熱量を明記する。
  • 仕出し弁当は、ヘルシー弁当やご飯の量を選択できるようにする。

糖尿病の診断基準は?

一般的に糖尿病と診断される基準は、空腹時血糖値 126mg/dl以上、2時間値 200mg/dl以上、随時血糖値 200mg/dl以上のいずれかを満たし、かつHbA1c 6.5%以上を言います。いずれか該当すれば、3~6ヶ月以内に再検査を行い判定します。

6. 血糖値のモニタリング

血糖値スパイクを防ぐ生活習慣によって、血糖値の急上昇を抑え、一日を通して血糖値の安定を図ることが可能です。自分の血糖値を知る方法がありますので、市販されている血糖測定器を利用してもよいでしょう。

これまでに、血糖値が高いと指摘されたことのない人も、血糖値を上手にコントロールし、糖尿病予防の生活習慣を身につけたいものですね。

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