健康経営銘柄に選定されるメリット・選定要件・申請手順【2025】

健康経営を目指す企業の基礎知識として、「健康経営銘柄」についてご案内します。
選定されるメリット・選定要件・選定プロセスについて分かりやすく解説します。

目次

「健康経営銘柄」とは?

「健康経営銘柄」は、経済産業省と東京証券取引所が共同で、特に優れた健康経営に取り組む上場企業を認定・公表(原則1業種1社)し、ESG投資や長期的な企業価値向上を重視する投資家に対し魅力的な企業として紹介することで、健康経営の取り組みの更なる促進につなげることを目的とした制度です。

健康経営優良法人(大規模法人部門)に認定された企業の中から、東京証券取引所の上場会社で財務状況などのスクリーニングに合格した「健康経営」に優れた企業が選定されます。

アンバサダーとしての役割に期待

健康経営銘柄の方針は、「東京証券取引所の上場会社の中から『健康経営』に優れた企業を選定し、長期的な視点からの企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業として紹介をすることを通じ、企業による『健康経営』の取組を促進することを目指す」こと、とされています。

健康経営銘柄企業に対しては、健康経営を普及拡大していく「アンバサダー」的な役割を求めるとともに、健康経営を行うことでいかに生産性や企業価値に効果があるかを分析し、それをステークホルダーに対して積極的に発信していくことが求められています。

出典:経済産業省商務・サービスグループヘルスケア産業課「健康経営の推進について」(令和6年3月)

原則は33業種ごと、1社を選定

健康経営銘柄は原則として、33業種に分けられた業種毎に1社を選定します。

一定の基準を満たしている場合には、1業種から2社以上も選定されますが、1業種あたりの選定数は5社を上限としています。なお、該当企業がいない業種については、選定なしとなります。

詳しくは、2024年に健康経営銘柄に選定された企業を紹介するレポートをご確認ください。

健康経営銘柄2024 選定企業紹介レポート

事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」より

健康経営銘柄に選定されるメリット

健康経営銘柄は、健康経営優良法人(大規模企業部門)の中でも東証一部上場企業という条件を満たし、財務諸表の審議をクリアし、該当業種の中でも上位に入っていなければ選定されません。選定されるメリットについて、分かりやすくまとめてみました。

従業員の健康意識を高め、健康維持に役立つ

選定された企業は、働く人々の健康を大切にし、そのための取り組みに積極的な投資が必要です。具体的には、全員が定期健康診断を受ける、残業を減らす目標を立てる、福利厚生でスポーツジムの割引を提供する、などの活動です。これらによって、従業員のメンタルの問題や過労からくる事故を減らすことができ、従業員の健康を守るメリットがあります。

企業のイメージ向上、優れた人材の採用

認定されると、その認定証やロゴを企業のWebサイトに載せることができます。「健康経営銘柄」の認定は、社員の心と体の健康を守る努力が認められた証です。認定をうけることで「社員を大切にする会社」としての評価が高まり、優れた人材の採用につながる可能性もあります。

ステークホルダーからの評価

健康経営銘柄の認定は、社員に投資し続けて成長を目指す企業を示すものです。これにより、投資家からの良い評価も得やすくなります。顧客、取引先、株主など、関係者からの信頼獲得が期待できます。

健康経営銘柄の選定要件

健康経営銘柄に選定されるには、前提条件として、大規模法人部門の健康経営優良法人として認定される必要があります。認定要件となっている「健康経営度調査」に回答し、その回答した企業の業界内でも高い基準をクリアすることが求められます。その基準について見ていきましょう。

PDF資料:健康経営優良法人2025(大規模法人部門)認定要件

引用:ACTION!健康経営

経営理念・方針

経営トップが従業員の健康づくりの取り組みを積極的に発表することが必要になります。企業としての健康づくりの方針を明確にし、さらに経営者自身も健康診断を受けることが条件となっています。

組織体制

健康経営のための担当者設置や組織体制を整えることが必須です。さらに、健康経営を進めるにあたって外部の専門家と協力することも高評価につながります。

制度・施策実行

健康経営のための具体的な計画を立て、それを実行していきます。健康経営優良法人認定(大規模法人部門)では、認定要件の1~16項目のうち13項目をクリアする必要がありますが、健康経営銘柄では2~16項目のうち13項目以上の評価項目をクリアする必要があります。

評価・改善

健康経営の成果を評価し、改善するための計画を立てることが必要です。行った活動の結果を確認し、それを基に改善を進めることが必須となります。課題ごとにPDCAサイクルを用いるなど、改善を明確にすることが大切です。

法令遵守・リスクマネジメント

認定を受けるためには、定期健診のような健康経営の基本的な活動をきちんと行っているかどうかが問われます。特に、50人以上の事業場はストレスチェックの実施が必須となるため、会社の規模に応じて適切なアクションを取ることが大切です。

健康経営銘柄2025の申請(令和6年度調査)では、次のような調査ポイントの変更が告知されています。
(以下、経済産業省のホームページから引用)

<令和6年度調査のポイント>
令和6年度は、日本経済社会を支える基盤としての健康経営を目指し、政策の3本柱に沿って、主に以下の点について変更しました。

(1) 健康経営の可視化と質の向上
健康経営が持続的に効果を生むためには、取組の意義や質の向上への意識を常に持ち続けることが重要であるとの観点から、経営層の関与を評価するなど配点バランスを見直しました。また、自社の状況を把握した上で結果・成果を意識した取組を推進するため、プロセスの多寡ではなくアウトプット指標への配点を高めました。

さらに、適切にデータ管理されたPHRの活用は、健康状態・生活習慣の可視化を通じて健康への充実した支援に繋がることから、PHR活用に向けた環境整備状況についての設問を新設しました。

(2) 新たなマーケットの創出
健康経営の国際的な普及促進の検討にあたり、海外法人を含めた健康経営の推進状況をより具体的に把握するため、注力している国と、その国での健康経営の実施方針について把握することを目的とした設問をアンケートとして追加しました。

(3) 健康経営の社会への浸透・定着
仕事と介護の両立支援が進んでいないという昨年度調査結果や、今年3月に経済産業省が公表した「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を踏まえ、大規模については育児と分離し、仕事と介護に関する設問を新設しました。  

また、常時使用しない非正社員等を対象に含める企業の取組を評価します。

さらに、従業員数の少ない法人に対して取組の実態に合わせた健康経営の推進を促す観点から、小規模法人の認定要件を一部緩和する特例を試験的に導入しました。

経済産業省:健康経営銘柄2025」及び「健康経営優良法人2025」の申請受付を開始しました

「健康経営銘柄」選定のプロセス

「ACTION!健康経営」(事務局ポータルサイト)にある「健康経営銘柄2024」選定企業紹介レポートには「健康経営銘柄2024」の選定プロセスが公開されています。その内容によると、以下のような選考プロセスとなります。

【1】 健康経営度調査の実施

経済産業省が実施する、従業員の健康管理に関する取組やその成果を把握するための、「従業員の健康に関する取り組みについての調査」(健康経営度調査)に回答。日本健康会議認定事務局へ申請。

【2】 評価基準に基づき健康経営に優れた企業を選出

【1】の調査に回答のあった企業を、評価基準に基づいて評価。このうち、東京証券取引所上場企業(TOKYO PRO Market 上場会社を除く)を対象に、健康経営優良法人(大規模法人部門)に申請している法人のうち上位500位以内であり、かつ必須項目をすべて満たしている企業を「健康経営」に優れた企業(選定候補)として選出。(※ 重大な法令違反がある場合は選定候補から除外)

【3】 財務スクリーニング等を経て「健康経営銘柄」を選定

【2】で選定候補とした企業について、ROE(自己資本利益率)に基づくスクリーニングや加点を行うとともに、前年度の調査への回答の有無、社外への情報開示状況等についても評価を行う。評価結果が業種内で最高順位企業、及び、全業種最高順位企業の平均より優れている企業を「健康経営銘柄」として選定。

健康経営銘柄2024 選定企業紹介レポート

こちらレポートの2P~3Pをご参照ください。2024年度の選定プロセス・選定要件が記載されており、選定された企業が業種別に報告されています。

出典:事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」より

健康経営銘柄の申請手順

健康経営銘柄の認定取得を目指す場合、大規模法人部門で健康経営優良法人に認定されることが不可欠です。この認定の申請から選定までの手順をお伝えします。

申請から選定までの流れ

  1. 事務局ポータルサイトにある「新規ID発行サイト」ボタンから申請用IDを必要事項を回答して申し込む
  2. 登録後にメールが届くので「健康経営度調査票」をダウンロード
  3. 「健康経営度調査票」に回答の上アップロード
  4. 認定委員会による審議
  5. 申請法人のうち、上位500位以内の上場企業を候補として抽出
  6. 東京証券取引所において、財務指標スクリーニングや加点等を実施
  7. 経済産業省及び東京証券取引所が共同で「健康経営銘柄」を選定

上場企業や過去に回答経験のある非上場企業には、申請受付開始と同時に事務局ポータルサイトから案内が届きます。初めて健康経営度調査に参加する企業は、新規で申請するためのID発行を行います。その後、メールが届きますので、事務局ポータルサイトのダウンロードURLから「健康経営度調査票」を取得してください。

調査票に回答・アップロードすると、11月~12月 に経済産業省から評価結果であるフィードバックシート(速報版)が届きます。フィードバックシートには、健康経営の取り組みを改善する上で必要な情報が整理されています。

評価結果で上位に入り、ホワイト500(大規模法人部門の上位500社)としての認定基準をクリアしている企業には「適合状況兼申請用紙」が送付されます。申請書を事務局に提出した後、日本健康会議健康経営優良法人認定委員会によって審査が行われ、毎年2月頃に認定内定の連絡、3月に正式な認定がされます。

事務局ポータルサイトとは?

事務局ポータルサイトとは、「ACTION!健康経営」(運営:株式会社日本経済新聞社)のことです。経済産業省「令和6年度 健康経営制度運営事業」により、株式会社日本経済新聞社(調査実施委託機関:株式会社日本総合研究所、株式会社日経リサーチ)が、健康経営優良法人認定制度の補助事業者となっています。

申請から認定までの流れと合わせて、詳しいスケジュールが知りたい場合には、事務局ポータルサイトの方に図解があります。そちらで最新の情報をご確認ください。

申請から選定までの流れ(2025年度・令和6年度申請)

ACTION!健康経営より

認定申請料【大規模法人部門】

認定申請料:80,000円(税込88,000円)/件

申請受付期間(令和6年度申請の場合)

2024/8/19(月)~2024/10/11(金)17時 締め切り

【まとめ】健康経営銘柄に選定されるためには?

健康経営銘柄について選定されるメリットや申請方法などをご紹介しましたが、選定をうけるためには、大規模法人部門で「健康経営優良法人」の認定を受けることが必要となります。

今回の記事でご紹介した「選定要件」や「選定のプロセス」をご確認いただき、経営者のコミットメント、組織体制の整備、具体的な健康経営の計画と実施、評価と改善の取り組み、法令遵守・リスクマネジメント、これらの要件を高い基準で満たせるように、日ごろから実践・改善を行うことが最も重要です。

詳細な要件や手続きは、経済産業省や公式サイト(事務局ポータルサイト)の最新のガイドラインを参照することをおすすめします。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

健康経営に関する部門(人事・総務部など)へ異動された方、新しく担当することになった方は、こちらの基礎知識もご参考ください。

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