健康経営を目指す企業の基礎知識として、「ホワイト500」についてご案内します。
認定されるメリット・認定要件・申請手順・認定企業一覧についてご紹介します。
健康経営優良法人認定制度・ホワイト500とは?
健康経営優良法人制度は、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから社会的な評価を受けることができる環境を整備することを目的に、日本健康会議が認定する顕彰制度です。企業規模別に「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つの部門があります。「大規模法人部門」の中でも特に優れた健康経営を行っている上位500社は「ホワイト500」として認定されます。
健康経営の考え方を普及拡大していく「トップランナー」
健康経営優良法人の方針は、「健康経営に取り組む優良な法人を『見える化』することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人』として社会的に評価を受けることができる環境を整備する」こと、としています。
大規模法人に対しては、グループ会社全体や取引先、地域の関係企業、顧客、従業員の家族などに健康経営の考え方を普及拡大していく「トップランナー」の一員としての役割が求められています。
大規模法人部門と中小規模法人部門、申請区分の違い
2部門は従業員の規模や、資本金の額などによって分けられます。
従業員の数は大規模法人部門に該当していて、資本金の額が中小規模法人部門に該当する場合には、どちらかの部門を選んで申請することができます。
「会社法上の会社等」または「士業法人」、左記以外の法人によって区分の条件が異なります。詳しくは、事務局ポータルサイトの申請区分に関する情報をご確認ください。
事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」より
ホワイト500に認定されるメリット
ホワイト500は、自社の健康への取り組みを外部にも伝えやすくし、健康づくりの具体的な目標としても役立ちます。認定されるメリットについて、分かりやすくまとめてみました。
従業員の健康意識を高め、健康維持に役立つ
ホワイト500に認定される企業は、働く人々の健康を大切にし、そのための取り組みに積極的な投資が必要です。具体的には、全員が定期健康診断を受ける、残業を減らす目標を立てる、福利厚生でスポーツジムの割引を提供する、などの活動です。これらによって、従業員のメンタルの問題や過労からくる事故を減らすことができ、従業員の健康を守るメリットがあります。
企業のイメージ向上、優れた人材の採用
ホワイト500に認定されると、その認定証やロゴを企業のWebサイトに載せることができます。ホワイト500の認定は、社員の心と体の健康を守る努力が認められた証です。認定をうけることで「社員を大切にする会社」としての評価が高まり、優れた人材の採用につながる可能性もあります。
ステークホルダーからの評価
ホワイト500の認定は、社員に投資し続けて成長を目指す企業を示すものです。これにより、投資家からの良い評価も得やすくなります。顧客、取引先、株主など、関係者からの信頼獲得が期待できます。
ホワイト500の認定要件
ホワイト500に認定されるには、前提条件として、大規模法人部門の健康経営優良法人として認定される必要があります。その上で、さらにホワイト500としての高い基準をクリアすることが求められます。その基準について見ていきましょう。

引用:ACTION!健康経営
1. 経営理念・方針
ホワイト500の認定を受けるには、経営トップが従業員の健康づくりの取り組みを積極的に発表することが必要になります。企業としての健康づくりの方針を明確にし、さらに経営者自身も健康診断を受けることが条件となっています。
2. 組織体制
健康経営のための担当者設置や組織体制を整えることが必須です。さらに、健康経営を進めるにあたって外部の専門家と協力することも高評価につながります。
3. 制度・施策実行
健康経営のための具体的な計画を立て、それを実行していきます。健康経営優良法人認定(大規模法人部門)では、認定要件の1~16項目のうち13項目をクリアする必要がありますが、ホワイト500では2~16項目のうち13項目以上の評価項目をクリアする必要があります。
4. 評価・改善
健康経営の成果を評価し、改善するための計画を立てることが必要です。行った活動の結果を確認し、それを基に改善を進めることが必須となります。課題ごとにPDCAサイクルを用いるなど、改善を明確にすることが大切です。
5. 法令遵守・リスクマネジメント
ホワイト500の認定を受けるためには、定期健診のような健康経営の基本的な活動をきちんと行っているかどうかが問われます。特に、50人以上の事業場はストレスチェックの実施が必須となるため、会社の規模に応じて適切なアクションを取ることが大切です。
健康経営度調査については、以下のコラムで詳しくご紹介しております。ぜひご参考ください。

健康経営優良法人2025の申請(令和6年度調査)では、次のような調査ポイントの変更が告知されています。
(以下、経済産業省のホームページから引用)
<令和6年度調査のポイント>
令和6年度は、日本経済社会を支える基盤としての健康経営を目指し、政策の3本柱に沿って、主に以下の点について変更しました。
(1) 健康経営の可視化と質の向上
健康経営が持続的に効果を生むためには、取組の意義や質の向上への意識を常に持ち続けることが重要であるとの観点から、経営層の関与を評価するなど配点バランスを見直しました。また、自社の状況を把握した上で結果・成果を意識した取組を推進するため、プロセスの多寡ではなくアウトプット指標への配点を高めました。さらに、適切にデータ管理されたPHRの活用は、健康状態・生活習慣の可視化を通じて健康への充実した支援に繋がることから、PHR活用に向けた環境整備状況についての設問を新設しました。
(2) 新たなマーケットの創出
健康経営の国際的な普及促進の検討にあたり、海外法人を含めた健康経営の推進状況をより具体的に把握するため、注力している国と、その国での健康経営の実施方針について把握することを目的とした設問をアンケートとして追加しました。
(3) 健康経営の社会への浸透・定着
仕事と介護の両立支援が進んでいないという昨年度調査結果や、今年3月に経済産業省が公表した「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を踏まえ、大規模については育児と分離し、仕事と介護に関する設問を新設しました。また、常時使用しない非正社員等を対象に含める企業の取組を評価します。
さらに、従業員数の少ない法人に対して取組の実態に合わせた健康経営の推進を促す観点から、小規模法人の認定要件を一部緩和する特例を試験的に導入しました。
経済産業省:「健康経営銘柄2025」及び「健康経営優良法人2025」の申請受付を開始しました
ホワイト500の申請手順
ホワイト500の認定取得を目指す場合、大規模法人部門で健康経営優良法人に認定されることが不可欠です。この認定の申請から選定までの手順をお伝えします。
申請から選定までの流れ
- 事務局ポータルサイトにある「新規ID発行サイト」ボタンから申請用IDを必要事項を回答して申し込む
- 登録後にメールが届くので「健康経営度調査票」をダウンロード
- 「健康経営度調査票」に回答の上、アップロード
- フィードバックシート(速報版)を確認・必要に応じて返送(11月・12月頃)
- 認定委員会による審議
- 日本健康会議が「健康経営優良法人」を認定
上場企業や過去に回答経験のある非上場企業には、申請受付開始と同時に事務局ポータルサイトから案内が届きます。初めて健康経営度調査に参加する企業は、新規で申請するためのID発行を行い、事務局ポータルサイトのダウンロードURLから「健康経営度調査票」を取得してください。
調査票に回答・アップロードすると、11月~12月 に経済産業省から評価結果であるフィードバックシート(速報版)が届きます。フィードバックシートには、健康経営の取り組みを改善する上で必要な情報が整理されています。
評価結果で上位に入り、ホワイト500としての認定基準をクリアしている企業には「適合状況兼申請用紙」が送付されます。申請書を事務局に提出した後、日本健康会議健康経営優良法人認定委員会によって審査が行われ、毎年2月頃に認定内定の連絡、3月に正式な認定がされます。
事務局ポータルサイトとは?
事務局ポータルサイトとは、「ACTION!健康経営」(運営:株式会社日本経済新聞社)のことです。経済産業省「令和6年度 健康経営制度運営事業」により、株式会社日本経済新聞社(調査実施委託機関:株式会社日本総合研究所、株式会社日経リサーチ)が、健康経営優良法人認定制度の補助事業者となっています。
申請から認定までの流れと合わせて、詳しいスケジュールが知りたい場合には、事務局ポータルサイトの方に図解があります。そちらで最新の情報をご確認ください。
ACTION!健康経営より
認定申請料【大規模法人部門】
認定申請料:80,000円(税込88,000円)/件
申請受付期間【令和6年度申請の場合】
2024/8/18(月)~2024/10/11(金)17時 締め切り
ホワイト500 に認定された企業の一覧
ホワイト500 認定企業一覧 2024
2024年3月にホワイト500の認定をうけた企業は、最終的に499社となりました。認定企業一覧は以下をご参照ください。(PDFファイル:9ページ)
健康経営優良法人(大規模法人部門)で認定を受けた企業を法人格別でみてみると、ホワイト500とホワイト500以外で認定された数は、以下の表のようになっています。
法人格の分類 | ホワイト500 | ホワイト500除く | 大規模法人部門合計 |
---|---|---|---|
会社法上の会社等 (例)株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、有限会社 等) | 469 | 2,245 | 2,714 |
士業法人 (例)弁護士法人、監査法人、税理士法人、行政書士法人、司法書士法人 等) | 1 | 2 | 3 |
特定非営利活動法人 | 0 | 1 | 1 |
医療法人、社会福祉法人、健康保険組合等保険者 | 15 | 110 | 125 |
社団法人、財団法人、商工会議所・商工会 | 8 | 42 | 50 |
公法人、特殊法人 (地方公共団体、独立行政法人、公共組合、公団、公社、事業団 等) | 1 | 21 | 22 |
その他、国内法に基づく法人 (社団法人、財団法人、特定非営利活動法人 等) | 5 | 63 | 68 |
合計 | 499 | 2,484 | 2,983 |
昨年は、健康経営優良法人(大規模法人部門)として認定を受けた企業が約3,000社あり、そのうち上位499社が「ホワイト500」として認定を受けたことになります。
以下の表は、業種別(証券取引所に準拠する業種)の認定数の内訳です。
業種名 | ホワイト500 | ホワイト500除く | 大規模法人部門合計 |
---|---|---|---|
水産・農林業 | 1 | 2 | 3 |
鉱業 | 1 | 1 | 2 |
建設業 | 11 | 96 | 107 |
食料品 | 23 | 46 | 69 |
繊維製品 | 2 | 16 | 18 |
パルプ・紙 | 2 | 8 | 10 |
化学 | 24 | 76 | 100 |
医薬品 | 11 | 39 | 50 |
石油・石炭製品 | 1 | 6 | 7 |
ゴム製品 | 2 | 9 | 11 |
ガラス・土石製品 | 2 | 17 | 19 |
鉄鋼 | 3 | 16 | 19 |
非鉄金属 | 3 | 20 | 23 |
金属製品 | 6 | 34 | 40 |
機械 | 13 | 71 | 84 |
電気機器 | 40 | 114 | 154 |
輸送用機器 | 31 | 110 | 141 |
精密機器 | 7 | 28 | 35 |
その他製品 | 6 | 34 | 40 |
電気・ガス業 | 9 | 10 | 19 |
陸運業 | 7 | 52 | 59 |
海運業 | 1 | 3 | 4 |
空運業 | 10 | 7 | 17 |
倉庫・運輸関連業 | 0 | 25 | 25 |
情報・通信業 | 69 | 300 | 369 |
卸売業 | 27 | 234 | 261 |
小売業 | 19 | 341 | 360 |
銀行業 | 23 | 62 | 85 |
証券、商品先物取引業 | 3 | 3 | 6 |
保険業 | 23 | 19 | 42 |
その他金融業 | 10 | 24 | 34 |
不動産業 | 16 | 53 | 69 |
サービス業 | 63 | 369 | 432 |
合計 | 469 | 2,245 | 2,714 |
この他にも、2024年度に認定された企業の一覧は健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」でご覧になれます。上表の引用元(Excelデータ)等、詳しくはこちらをご参考ください。
引用元:ACTION!健康経営
【まとめ】ホワイト500を取得するためには?
ホワイト500についてメリットや申請方法などをご紹介しましたが、ホワイト500の認定をうけるためには、大規模法人部門で「健康経営優良法人」の認定を受けることが必要となります。
今回の記事でご紹介した「ホワイト500の認定要件」をご参照いただき、経営者のコミットメント、組織体制の整備、具体的な健康経営の計画と実施、評価と改善の取り組み、法令遵守・リスクマネジメント、これらの要件を高い基準で満たせるように実践していきましょう。
詳細な要件や手続きは、経済産業省や公式サイト(事務局ポータルサイト)の最新のガイドラインを参照することをおすすめします。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
健康経営に関する部門へ異動された方、新しく担当することになった方は、こちらの基礎知識もご参考ください。
