ストレスチェックの活用法(職場の健康管理)

ストレスチェックは、働く人のストレスの有無や程度を客観的に評価し、自分の心の状態を知ることで、精神的な不調を未然に防ぐために施行された対策です。また、個人のストレスの有無や程度を評価するだけではなく、事業所で働く従業員全体の結果を分析することによって、職場の環境や人事の配置などを見直すきっかけになります。

※「労働者のストレスのチェック等の実施の促進に関する法律」(通称:ストレスチェック法)2016年から施行。

今回はストレスチェックおよびその活用法や留意点についてご紹介します。

目次

ストレスチェックは義務化されている?

ストレスチェックは2014年6月に労働安全衛生法が改正され、2015(平成27)年12月からその制度が義務化されました。事業主は、従業員の心な健康を保ち、職場環境における心理的な負担を軽減する義務があります。

ストレスチェックの目的は?

ストレスチェックの目的は、従業員の心の負担やストレスの程度を客観的に把握し、従業員自らが自身のストレスに気づくこと、またストレスチェックの結果に基づき改善ポイントを知り、事業主はその結果を踏まえ、働きやすい職場環境を整えることです。

抱えているメンタルヘルスの問題を早期に認識することで、速やかに必要な対策をたてることができ、精神面の不調を防ぐことが主な目的です。

ストレスチェックの対象となる事業場は?

労働者数50人以上の事業場が対象です。事業場(店舗や支店など)の人数で判断されるため、全労働者数が50人を超える会社であっても、事業場が50人未満であれば、実施義務の対象にはなりません。

しかし、該当しない事業場も心の健康を保つため、自主的にストレスチェックを受けるよう推奨されています。(努力義務)

ストレスチェックの対象者は?

正規職員および1年以上雇用継続が見込まれる(所定労働時間が正規職員の3/4以上)労働者が対象です。

ストレスチェックを実施する時期は?

実施する時期は定められていませんが、一年以内に一度実施します。できれば、経年的な変化をみるためにも同じ時期に実施することが望ましいです。衛生委員会などの審議により、複数回実施することは可能です。

ストレスチェックは報告の義務はある?

ストレスチェックは、年に一度、所管の労働基準監督署へ報告する必要があり、報告を行わないと罰則があります。ストレスチェックを実施しなかった場合も、同様に労働基準監督署への報告が必要です。

50人未満の事業場については、報告の義務はなく、罰則もありません。(※労働安全衛生法参照)

ストレスチェックの報告書の入手方法

報告書は厚生労働省ホームページに掲載されています。

入手方法

  1. 「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を開く
  2. 「帳票作成メニュー」をクリック
  3. 「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」をクリック

ストレスチェックの主な種類

ストレスチェックの主な種類は、標準版の「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)と上記の他に、仕事の負担、働きがいやハラスメントなどを評価する23問を加えた「新職業性ストレス簡易調査票」(80項目)があります。

職業性ストレス簡易調査票(57項目)

標準版の職業性ストレス簡易調査票は、「仕事のストレスの要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3つの領域と家庭や仕事の「満足度について」の質問を含む57項目で構成されています。

ストレスチェックの調査票は、法令による定められた形式はありませんが、厚生労働省が推奨しているのは、標準版のストレスチェックです。

新職業性ストレス簡易調査票(80項目)

新職業性ストレス簡易調査票(80項目)は、職業性ストレス簡易調査票(57項目)に仕事の負担、働きがいやハラスメントなどを評価する23問を加えた80項目で構成されています。

詳細なストレスの状況を知ることができるため、よりきめ細やかな職場の改善策を検討することができますが、標準版より記入に時間がかかることや経年変化を分析する際に、次年度からも同じ形態で行えるかどうか検討してから活用するとよいでしょう。

ストレスチェックの評価方法

職業性ストレス簡易調査票(57 項目)を使用する場合のチェックの評価方法は、「合計点数を使う方法」と 「素点換算表を使う方法」 があります。

ここでは、要点のみ解説します。評価方法の詳細は、厚生労働省ホームページをご覧ください。

「合計点数を使う方法」は、1、2、3、4のいずれかを選択して合計点数を出していきます。
(1→4点、2→3点、3→2点、4→1点)

質問の一部に点数が低いほどストレスが高いと評価する質問が混ざっていて、この部分は、点数を逆転させて足していく必要があります。
(領域Aの1~7、11~13、15と領域Bの1~3は、回答のあった点数に応じて、1→4、2→3、3→2、4→1に置き換えて計算します。)

職業性ストレス簡易調査票(57 項目)を使用する場合

高ストレス者と選定する基準は下記の通りです。

  1. 領域Bの合計点数 77 点以上(最高点は116 点)
  2. 領域AとCの合計点数76点以上(最高点は104)、かつ領域Bの合計点数が 63点以上

素点換算表を用いる場合

「素点換算表を使う方法」は、質問の数の影響を排除し、尺度ごとの評価が考慮されたストレスの状況を把握できるメリットがあります。デメリットは、計算の方法が複雑で使いにくい点です。

各項目の点数を元に、素点換算表に当てはめて算出します。素点換算表は、評価点が低いほどストレスの程度が高くなります。

尺度によって、ストレスの程度の意味合いが逆になるものがありますが、その場合は素点換算表の評価点が予め逆向きに設定されていますので、領域ごとに合計を出します。

高ストレス者と選定する基準は下記の通りです。

  1. 領域Bの合計が 12 点以下(最低点は6点)
  2. 領域AとCの合計 評価点の合計が 26 点以下(最低点 12 点)、かつ領域Bの合計が 17点以下

ストレスチェックの個人結果の通知の流れ

ストレスチェックの結果から、高ストレス状態の従業員を選定します。ストレスチェックを実施した医師や保健師は、従業員へその結果をフィードバックし、高ストレスと判断された従業員の申し出により、医師による面接を受けていただきます。

また、面接の結果によっては、従業員に対してカウンセリングなどの適切な支援を行い、必要時、事業所は業務内容や業務体制の改善を検討します。

ストレスチェックの結果は、従業員本人の同意を得ることなく、他の従業員や第三者へ提供をすることはできません。よってプライバシーは保護されます。

ストレスチェックの結果の集団分析

ストレスチェックの結果を部署毎に集計し、分析します。集団毎に傾向が見えてくることがありますので、ストレスチェックの結果を生かし、必要時、職場環境の改善を検討します。

集団分析の結果、衛生委員会などで職場環境について話し合い、職場の産業保健スタッフと協力し、労働時間の調整や業務内容の見直しなどの改善案を検討します。

ストレスチェックを実施している事業所や担当者の相談窓口

※ストレスチェックの実施方法などの相談に対応しています。

「ストレスチェック制度サポートダイヤル」

電話番号0570-031-050
(全国統一ナビダイヤル)
受付時間平日10時~17時
(土曜、日曜、祝日、12月29日~1月3日は除く)

最寄りの産業保健総合支援センターでも対応しています。

普段のストレスをセルフチェックしてみましょう

年一回のストレスチェックのみで、自分のストレスを十分に認識することができないことも想定されます。繁忙期などは、知らず知らずのうちに、ストレスを抱えている可能性があるでしょう。心身の疲れがたまっていると感じたら、ストレスのセルフチェックしてみましょう。

厚生労働省 こころの耳
「5分でできる職場のストレスセルフチェック」
https://kokoro.mhlw.go.jp/sp/check/

セルフチェックでストレスの状態が高めと判定が出た場合や心の不調を感じたら、専門家へ相談の目安です。心療内科や精神科、かかりつけ内科への受診の他、カウンセリングを受けることなども含まれます。

ストレスチェックは、働く従業員のストレスに対する取り組みを強化し、ストレスに関する健康問題の早期発見と適切な対処を支援することを目的としています。働く人の環として、労働環境の改善に役立てることが期待されます。

ストレスチェックは機微なものであるため、法律や指針などで厳しい情報管理が求められています。衛生委員会などで話し合い、決めるべき事項が多くありますが、専門家のアドバイスを受けながら、この制度を上手に活用していきましょう。

この記事を書いた人

小田部 淳子

看護師として外科病棟勤務。その後保健師として銀行の健康管理センターにて産業保健、健康管理センターにて人間ドックおよび健診後の保健指導、その後出版社にて健診後の文書指導、特定保健指導、糖尿病重症化事業、電話およびWeb健康相談、電話相談運営、社内研修企画運営、健康関連原稿の業務を歴任。現在、特定保健指導および原稿の業務に携わっている。

【保有資格および研修終了】

  •  看護師
  •  保健師
  •  養護教諭二種免許
  •  一種衛生管理者
  •  産業保健指導者、ヘルスケアトレーナー
  •  ピンクリボンアドバイザー初期認定
  •  東京糖尿病療養指導士
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