高血圧の改善・対策の重要性と基本情報

血圧が高いと言われると気になるものです。症状がほとんど起こらないので大丈夫だと思い放置している人は少なくありませんが、放っておくと進行し、ある日突然、命にかかわるような脳梗塞や脳出血、心筋梗塞などの大病につながります。日頃から血圧測定を習慣にして、自分の値を把握し、対策を立てコントロールしましょう。

今回は、高血圧およびその改善するポイントをご紹介します。

目次

血圧とは

血圧とは、心臓から送り出された血液が血管(動脈)の内壁に与える圧力のことです。血圧測定では、最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧)の値を知ることができますが、慢性的に高い状態が続くことを高血圧と言います。

測定するたびに、血圧の数値が違うので、どれが自分の本当の血圧なのかわからないと思いがちですが、血圧は一日を通して変動し、常に一定というわけではありません。一般的に、夜の血圧は低くなることが多く、日中の1割から2割程度低くなります。

朝の血圧に注意

朝の家庭血圧が135/85mmHg以上の方や朝に急激に上昇しやすい方は、臓器への負担が増し、将来的に脳梗塞や脳出血、心筋梗塞などのリスクが高くなるので注意が必要です。一日2回朝晩の血圧測定が基本ですが、一日1回の場合は、朝の測定をお勧めします。

基準値

日本高血圧学会の基準

日本高血圧学会による高血圧と診断される基準は、140/90mmHg以上(診察室血圧)です。

診察室血圧の区分

正常血圧120/80mmHg未満
正常高値血圧120~129/80mmHg未満
高値血圧130~139/80~89mmHg
Ⅰ度高血圧140~159/90~99mmHg
Ⅱ度高血圧160~179/100~109mmHg
Ⅲ度高血圧180以上/110以上mmHg

診察室血圧で140/90mmHg以上の場合、家庭血圧を測定して日頃の数値を確認しておきます。

家庭血圧の基準

家庭で測定する高血圧の基準は、診察室血圧とは異なり、135/85mmHg以上です。

家庭血圧の区分

正常血圧115/75mmHg未満
正常高値血圧115~124/75mmHg未満
高値血圧125~134/75~84mmHg
Ⅰ度高血圧135~144/85~89mmHg
Ⅱ度高血圧145~159/90~99mmHg
Ⅲ度高血圧160以上/100以上mmHg

家庭血圧の測定方法

朝晩各2回ずつ測定し、それぞれの平均値が、自分の正しい血圧とします。上記の区分に当てはめて確認しましょう。

血圧測定

正しい値を知るために、測定方法や条件を守ることが大事です。毎日できるだけ同じ条件で測定すると、血圧の変動をとらえることができます。できるだけ背もたれのある椅子に座り、腕を心臓と同じ高さになっているか確認し、数分安静にしてから測定しましょう。

測定の留意点

測定に推奨される時間帯は、朝起きて1時間以内(排尿後・朝食前・薬を飲む前)に、夜は寝る前に測定します。入浴直後・喫煙後・食後は一時的に血圧が変動するため、いずれも30分以上経ってからの測定をお勧めします。室温(20℃前後が理想)に注意して、ゆったりした気持ちで、深呼吸はせずそのまま計ります。

知っておきたい「脈圧」について

脈圧とは

最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧)の差を脈圧と言います。

脈圧の正常値

脈圧は、50mmHg前後が正常と考えられています。

脈圧と動脈硬化

脈圧がおおむね70mmHg以上になると動脈硬化が進んでいる可能性があります。逆に脈圧が正常よりも少ない場合は、末梢の血管が硬くなっている可能性があり、さらに動脈硬化が進行し太い血管も硬くなってくると、最高血圧も上昇してきます。

最低血圧だけが高い場合も、高血圧と診断され治療の対象となります。脈圧も意識して確かめてみましょう。

血圧計の種類

大きく分けると、「上腕式」と「手首式」があります。

上腕式

日本高血圧学会および医師が推奨しているのは、上腕式です。

手首式

手首式は、軽量なので持ち運びしやすく、旅行や出張の際に便利です。長く使えるものなので、出張等の頻度の高い人は、一つ準備しておくとよいかもしれません。

いずれも、正しい測定方法を守れば大きな差はないと言われていますが、これから購入を検討している方は、医療機器メーカーが販売している上腕式を選ぶとよいでしょう。お持ちでない場合は、外出先でドラックストアや公共の施設に設置されている血圧計の利用も可能です。

白衣性高血圧

概要

白衣性高血圧は、普段は正常血圧であるが、人間ドックや健康診断、病院で血圧を測定するときだけ高くなることを言います。一般的に、循環器の病気のリスクはそれほど高くなく、治療は不要と考えられていますが、基準値内に収まっている方と比べると、高血圧に移行する可能性がやや高いとも言われています。

見分け方

白衣性高血圧かどうかを判断するため、普段の血圧(家庭血圧)を確認する必要があります。緊張しやすい人、疲れや寝不足、体のコンディションによっては、一時的に普段の血圧よりも高くなることはよくありますが、いずれにしても高いことが確認された場合は、再度血圧測定を行うことが大切です。

白衣性高血圧と言われた人は、放置することなく、健康管理の一貫として日頃から血圧を確認しておくようにしましょう。

高血圧の原因は?

高血圧の原因は単純でなく、いくつかの要因が複合していることも少なくありません。一般的な要因をご紹介します。

遺伝的な要因

血縁関係の人が高血圧の場合、遺伝的な傾向による血圧への影響があります。

生活習慣による影響

喫煙習慣、運動不足、適量を越える飲酒(1日2合以上)、塩分の多い食事、野菜不足、不規則な生活や食事などです。

体重の増加

肥満(BMl 25以上)は血圧を上げる要因ですが、BMI25未満の人でも以前より体重が増えると影響が出ます。

加齢

年齢が上がるにつれて、血管が硬くなり、動脈硬化が進行して、血圧が上がりやすくなります。生活習慣の改善により進行を遅くすることが可能です。

精神的なストレスや寝不足、過労

過度の緊張やストレス、長期間にわたるストレスは、交感神経が優位になり、血管が収縮して血圧を上げます。寝不足や身体の疲れの蓄積も血圧を上昇させる要因です。

慢性の病気

腎臓病などの慢性の病気が血圧を上げることがあります。

これらの要因は複雑に絡み合い、高血圧の発症を促進する可能性があります。高血圧の予防や血圧管理のためには、健康的な生活習慣を維持し、健康診断などで定期的なチェックと日々の血圧測定が大切です。

高血圧の症状は?

血圧が高くなっても、基本的に自覚症状が現れにくいです。無症状のまま動脈硬化が進行し、脳や心臓などの重要な臓器に負担をかけ、生活に支障をきたす病気を発症させる原因になります。

普段の血圧が正常であっても血圧が急に上がる、または数値が常に高いと、以下のような症状が現れることがあるため、日ごろから体調に変化がないか確認しておくことも大切です。

起こり得る症状

頭痛、動悸や息切れ、めまい、肩こりなどです。これらの症状は、血圧が高くなくても起こることは珍しくないため、血圧の確認は必要です。

高血圧と治療の必要性

高血圧と言われたら薬を飲んだ方がいいか、飲み始めたら一生飲まないといけないか不安になる方もいらっしゃると思います。

高血圧の薬を飲む理由

高血圧による血管のダメージを防ぎ、身体の重要な臓器である脳、心臓、腎臓を守るためです。

治療開始の目安

血圧が140/90mmHg以上ですが、高値血圧(130~139/80~89mmHg)であっても生活習慣の改善により血圧が十分下がらない場合は、早期に治療開始することが推奨されるようになりました。

理由は、血圧130mmHg未満/80mmHg未満を維持することができれば、高血圧が原因となる脳梗塞・脳出血・心筋梗塞などの病気の予防効果が高くなるからです。

継続的な治療の必要性

高血圧の治療を始めて血圧が下がったからと言って、薬を自己判断で止めると血圧は再び上がる可能性が高いため、通常は飲み続ける必要があります。しかし、減塩、減量、適度な運動、野菜や適量の果物を食べる、過度のストレスを回避するなど生活習慣を改善し、結果として血圧のコントロールが良好になれば、減薬していき、薬を止められる人もいます。

自己判断での減薬や休薬は、血圧が急に上がるなど危険を伴うため、主治医に相談しながら薬の量を調整しましょう。できれば最終的に薬を止められるように生活習慣の改善を徹底し、自己管理できることを目指したいものです。

薬を飲み始めたのにすぐに数値が下がらないのはなぜ?

血圧は、ゆっくり下げていくのが基本です。強い薬を飲み、急激に下げると、めまいやふらつきなどの症状が出ることがあります。

また、急に血圧が下がると、身体の隅々まで血液を十分送れなくなる可能性があるため、薬の量や種類を調整し、3か月くらいかけてゆっくり下げていきます。飲み始めたのに、血圧が下がらないから効果がないと思い、治療を中断することのないように気をつけてください。

治療を始めても、生活習慣の改善は続けていく必要があります。

高血圧の薬を飲み忘れたらどうすればよい?

主治医に相談

血圧の薬は、毎日同じ時間帯に飲むことで、血圧の安定をはかれます。ときに飲み忘れることがあると思いますが、そのときの対処方法をあらかじめ主治医に相談しておきましょう。一般的に、一日1回の服薬の場合は、気づいた時点で服薬します。一日2回の場合、朝の分は気づいたとき(昼から夕方)に朝の分を飲み、夕食後の分は寝る前に服薬します。2回分服薬することのないように注意が必要です。飲み忘れたときに備えて、余分に持ち歩くようにしましょう。

食事:血圧を下げる食事のポイント

食事の塩分を抑えるイメージ画像

減塩

塩分は、身体に水をため込みやすくなり、結果として血圧を上昇させてしまいます。塩分の多くは、加工食品から取っていますので、加工食品を使用するときは、調味料の使用量を控えましょう。その他のときも、調味料(醤油や塩)の使用を抑え、味噌汁は具沢山、麺類の汁は半分以上残す、漬物・塩辛などの塩分の多く含まれるものはできるだけ避けることが望ましいです。

一日の目標塩分量

一日の目標塩分量は、6g以内です。食品に表示されている栄養成分表示(塩分)の確認をお勧めします。
ナトリウムでの表示は、ナトリウム(g)×2.54=食塩量(g)

野菜と果物を取る

野菜や果物はカリウムが豊富に含まれます。カリウムは塩分の排泄を促し、血圧をコントロールしてくれます。野菜は一日350g(5皿)、果物は一日100~200g(バナナなら1本、みかん2個、リンゴ半分から1個など)を目安に取りましょう。

良質のタンパク質を適量取る

たんぱく質は、肉より魚・大豆製品の割合を増やし、飽和脂肪の摂取量を抑えます。たんぱく質は1食手のひらに載る量が目安です。また揚げ物を食べる頻度が高い人は、回数や量を減らし、焼いたものや茹でたものに変更します。

脂質

脂質は、素焼きナッツやオリーブオイルなどの不飽和脂肪酸から取ることをお勧めします。

運動:血圧を下げる運動のポイント

適度な運動

適度な運動は血圧をコントロールするのに役立ちます。運動は定期的(できれば毎日)に行い、可能な範囲で1日30~40分以上行います。運動を長く続けていくと、降圧効果が期待できます。

運動の種類

運動の種類は、有酸素運動を中心に早足(ややきつい)・スロージョギングなどが推奨されています。まとまった時間の確保が難しければ、10分以上の運動を数回に分けて行っても同様の効果があると言われています。

血圧を下げる生活の留意点は?

ストレスを和らげる

過度のストレスは血圧に悪影響を与えることがあります。リラックスできる時間を持つ、ストレスを和らげる対策を考える、友人・家族・同僚などに相談する、場合によっては専門職や職場のストレスであれば上司へ相談も必要かもしれません。ストレスは悪いイメージがあるかもしれませんが、ストレスを感じたときに自分や生活スタイルを振り返るきっかけになるため、これを機に改善策を練りましょう。

規則正しい生活

できるだけ規則正しく過ごす、睡眠と休息を確保する、心身がリラックスできる方法を考えてみるなどです。たとえば、受け止め方を変えてみる(別の角度から物事を見てみる)、声を出す、身体を動かす時間を増やす、深呼吸をする、気持ちに合った音楽を聴く、香りを楽しむなど、リラックス技法などを取り入れることで、自分自身を労り、ストレスを軽減しましょう。

睡眠時間の確保

寝不足や過度の疲れは、血圧を上げる要因になります。年齢と共に睡眠時間は短くなりますが、個人差はあるものの6~7時間の睡眠時間が目安になります。睡眠の質を上げる工夫も大切です。

睡眠の質を上げる工夫

  • 毎日同じ時間に寝て体内時計を整える
  • 快適な就寝環境にする(照度を下げる、間接照明にする、20℃前後の快適な温度にする)
  • 静かな環境を整える など

寝る前に控えた方がいいこと

  • 寝る前の熱いお風呂・・・熱いお風呂は身体の深部の体温が下がりにくくなり、入眠の妨げになります。
  • 寝る前の食事や飲酒・・・夜食などの食事は代謝が上がり睡眠の妨げになります。また消化に時間がかかるため寝る3時間前までに夕食を済ませるようにします。アルコールは、夜中に目が覚める、トイレが近くなります。
  • カフェインの含まれる飲料・・・寝る前のカフェインは睡眠の妨げになります。夕方以降(就寝2~8時間前)はカフェインの含まれる飲料や食べ物は控え、飲みたいときはデカフェ、麦茶、ルイボスティーなどを選ぶと良いでしょう。
  • 寝る前の激しい運動・・・運動習慣のある方は睡眠の質が高い傾向にありますが、寝る前に運動強度の高い激しい運動は睡眠を妨げる原因になります。行う場合は、負担の少ない有酸素運動(早足の散歩や軽いランニングなど)が良いでしょう。
  • デジタルデバイスの使用・・・寝る前のスマートフォンやパソコンなどを使用すると、ブルーライトの影響により睡眠の質を低下させる原因になります。

寒暖差による身体への負担を避ける

季節や温度差によって血圧は上下します。たとえば、温度の低いお風呂場への移動、急に熱い風呂に入る、温かいリビングから寒いトイレに行くなど、10℃以上温度差があると、血管や心臓への負担が増します。

寒いところに行くと血圧が急上昇し、熱い風呂に入ると血圧が急下降することで、ヒートショックを起こすことがあります。秋から冬にかけてヒートショックを起こしやすい時期です。外出の際も防寒対策(マフラーや手袋、帽子など)を行い、温度差による身体への負担をかけないように注意しましょう。

規則正しい生活を続ける

寝起きの時間をできるだけ一定にして、生活のリズムを整えて過ごすことは、血圧の安定につながります。

タバコを減らす、禁煙する

タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させるため、血圧を上昇させます。個人差があるものの10~20mmHg上昇させ、その作用は、喫煙後30分程度続くとされています。連続して2本吸うとさらにその時間が延長されます。また、動脈硬化を進行させる要因となるため、禁煙を検討し、吸い続ける場合は1本でも少なくすることが大切です。

アルコールは適量を守る

アルコールの適量は、日本酒1合(純アルコール約20g)が目安です。飲まないに越したことはありませんが、飲む場合は、週7合以内に収めるよう推奨されています。一日2合を超える飲酒は、血圧を顕著に上昇させる原因になります。適正飲酒を心がけましょう。なお、女性の適量は2/3合です。週単位で節酒を心がけましょう。

アルコールの計算方法
アルコールの量(ml)× アルコール濃度× 0.8
例:ビール500mlの場合 500ml×0.05×0.8=純アルコール20gとなります。

肥満と血圧

痩せると血圧は下がるのは本当でしょうか?高血圧の原因や個人差がありますが、本当です。適正な体重を維持することで、血圧を下げることが可能です。BMIが25を超えている人は、まずは3~5%減量しましょう。過去の健診結果などを確認し、体重と血圧の推移を見比べるのも参考になります。今より痩せているときの血圧はいくつだったでしょうか。

高血圧の薬の種類

  • ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、カルシウム拮抗薬・・・血管を広げ、血圧を下げる働きがあります。
  • 利尿薬・・・余分な塩分と水分を身体の外に排泄させ、血圧を下げます。
  • α(アルファ)遮断薬・・・血圧を上げる神経の働きを抑えることで、血圧を下げます。
  • β(ベータ)遮断薬・・・血圧を上げる神経の働きを抑え、血管の収縮を弱めることで、血圧を下げます。

副作用

血圧の薬は、副作用が現れることがあります。気になる症状があるときは、自己判断で薬を止めずに、できるだけ早く主治医への相談をお勧めします。お急ぎの場合は、医療機関へ電話で相談すると対応してくださると思います。 起こりやすい症状は、めまい、立ちくらみ、むくみ、動悸、ほてり、頭痛、便秘、脱水、手足の冷え、脈拍数が少なくなるなどです。

まとめ

血圧は、生活習慣の是正と必要時服薬治療を行うことで、血管のダメージを防ぎ、脳・心臓・腎臓という重要な臓器を守ることができます。とくに脳や心臓は大きなダメージを受けると、日常生活に大きな支障をきたし、場合によっては生命を脅かすことにもなりかねません。

高血圧は、症状が起こりにくいですが、動脈硬化は確実に進んでいくため、サイレントキラーと呼ばれています。日ごろから、自分の血圧を知り、生活習慣を見直しながら自己管理を行い、必要時、内科(循環器内科)で治療を受けるなどのサポートを受けながら、コントロールしていきましょう。

この記事を書いた人

小田部 淳子

看護師として外科病棟勤務。その後保健師として銀行の健康管理センターにて産業保健、健康管理センターにて人間ドックおよび健診後の保健指導、その後出版社にて健診後の文書指導、特定保健指導、糖尿病重症化事業、電話およびWeb健康相談、電話相談運営、社内研修企画運営、健康関連原稿の業務を歴任。現在、特定保健指導および原稿の業務に携わっている。

【保有資格および研修終了】

  •  看護師
  •  保健師
  •  養護教諭二種免許
  •  一種衛生管理者
  •  産業保健指導者、ヘルスケアトレーナー
  •  ピンクリボンアドバイザー初期認定
  •  東京糖尿病療養指導士
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