健康診断や人間ドックの有所見率は、年々上昇傾向でしたが、令和3年は久しぶりに低下し、約6割(59.7%)でした。一番多い所見は、血中脂質検査で約3割(33%)でした。
健康診断の所見は、一般的に症状がない(少ない)のが特徴で、放置することで生活の質を低下させ、当たり前と思って過ごしてきた日常生活に支障をきたすことがあります。
今回は、一番多くみられる血中脂質検査の一つであるLDL(悪玉)コレステロールを下げる方法をご紹介します。
LDLコレステロールが高いとどうなる?
LDLコレステロールの高い状態が続くと、血管の壁に脂がたまり、動脈硬化の原因になります。
数値の高い期間が長ければ長いほど、数値が高ければ高いほど、リスクが上がり、動脈硬化が原因の狭心症・心筋梗塞、脳梗塞などが発症しやくなると考えられています。
脳や心臓の血管は、脂の蓄積により細くなる、詰まることになると、他に回避できる血管のルートがほぼないため、基準値内の数値を保ち、予防することが重要です。
LDLコレステロールの基準値
LDLコレステロールが120mg/dl以上であれば、生活習慣を見直し、改善に努めましょう。
LDLコレステロールが140mg/dl以上の場合は、医療機関で経過を診る必要があります。個人差はありますが、食事内容の見直しと運動習慣の改善を3~4ヶ月行うと数値が好転することがあります。その上で、服薬治療するか否かを判断していきます。
LDLコレステロールご180mg/dl以上の場合は、すみやかに服薬治療が開始されます。
治療が始まったからと言って、生活習慣を変える必要がない訳ではありません。必要時、食事内容の見直しと運動習慣の改善を行い、肥満の方は、減量に務めます。
LDLコレステロールを下げる食べ物は?
毎日少しでも取りたい食品をご紹介します。毎日が難しければ、一週間のうちの数回でもとるようにしましょう。
飽和脂肪酸・トランス脂肪酸・コレステロールを多く含む食品の摂取量や頻度を減らし、食物繊維や不飽和脂肪酸を多く含む食品をとることが大切です。
【不飽和脂肪酸の多い食品】~常温で液体(冷やしても固まらない)~
不飽和脂肪酸は体内で作ることができないため、食品から適度に摂取しましょう。血液をサラサラにして、代謝がよくなります。
オメガ3系脂肪酸を含む食品
※魚の脂には、動脈硬化を予防する不飽和脂肪酸のオメガ3が豊富に含まれています。週3回以上食べましょう。
オメガ6系脂肪酸を含む食品
※不飽和脂肪酸のオメガ6が豊富に含まれ、LDLコレステロールを下げる効果があります。ただし、摂取量が多すぎると、HDL(善玉)コレステロールも下げてしまうことがあるので、注意が必要です。
1日の油の使用量は、大さじ1杯(約12g)、おおくても2杯以内が目安です。
一価不飽和脂肪酸(オメガ9系脂肪酸)を含む食品
【大豆製品やその他の豆】
大豆に含まれるたんぱく質は、コレステロールを下げる働きがあります。
【食物繊維の多い食品】
食物繊維の多く含まれる食品は、コレステロールの吸収を抑え、余分なコレステロールを体の外に出してくれます。外食や惣菜の購入でも不足しないように、メニュー選びを一工夫しましょう。
一日に取りたい食物繊維は?
野菜・きのこ類・海藻類を両手にのる量が目安→食物繊維約25gに相当。
1日3食、1食につき小皿2皿を目標に食べましょう。
このうち、中まで色の濃い野菜(緑黄色野菜)は全体の1/3以上とりたいものです。
適量は、100~200g
例:グレープフルーツ、みかん、りんご、パイナップル、柿、キウイ、いちごなど
LDLコレステロールを上げる食べ物は?
食べてはいけない食べ物はありませんが、食べ過ぎに注意が必要な食品はあります。
飽和脂肪酸・コレステロール・トランス脂肪酸を多く含む食品は控えるようにします。
【飽和脂肪酸の多い食品】~冷やすと固まりやすい~
食べるなら、脂身の少ない肉をチョイス
例:牛カルビ→牛もも肉、豚バラ肉→豚もも肉
※肉類を食べるなら、体温の高い時間帯の日中や運動前後がおススメ。遅い時間や夕方以降は、魚類や大豆製品を選ぶと良いです。ラードや牛脂を使ったカツカレー・カツ丼・チャーハン・豚骨ラーメンなどは控えめにしましょう。
【コレステロールを多く含む食品】
コレステロールの多く含まれる食品の影響を受けやすい人もいますが、あまり影響を受けない人もいます。コレステロールの大半はおもに肝臓で作られ、食品に由来する部分は、個人差が大きくなるからです。
一般的には、コレステロールが高いと言われた人は、コレステロール摂取量を1日200mg程度に抑えることが推奨されています。
自分がどちらのタイプか知るためには、コレステロール含有量の多い食品を1ヶ月~3ヶ月ほど控え、血液検査を受けてみることをお勧めします。下がれば、食品からのコレステロールの影響を受けやすいタイプと判断され、変化がなければ、影響を受けにくいタイプど推測されます。
【トランス脂肪酸】
トランス脂肪酸は、天然のものと液体から固体の脂(油)を作り出した硬化油で、人工的に作られた油です。LDLコレステロールを上げて、動脈硬化を進めます。
トランス脂肪酸は1日当たりの摂取エネルギーの約1%未満に抑えましょう。
※1日平均エネルギー量の1%=約2g
LDLコレステロールを下げる基本的な生活習慣は?
【1】運動する
体のコンディションに合わせて、定期的な運動を行います。運動は大きく分けて、有酸素系の運動と筋力トレーニングなどの無酸素系の運動の二種類があります。
有酸素運動
定期的に有酸素運動を行うと、脂肪を燃やし、LDLコレステロールおよび中性脂肪が減り、HDL(善玉)コレステロールが増え、脂質のバランスが良くなります。途中で止めてしまうことなく、細々とでもコツコツ続ける努力が大切です。
有酸素運動の時間:週150分以上を目安に取り組みましょう。
状況によっては、室内でステッパー、エアロバイクやウォーキングマシーン、足踏みやストレッチなどでもOKです。
筋力トレーニング
継続して行うことで、中性脂肪とLDLコレステロールが低下し、HDLコレステロールが上昇します。頻度は10~15回続けてできる負荷、週2日以上できれば週3~4日を目安に行いましょう。
【2】アルコールは適量に抑える
飲み過ぎると、中性脂肪が増えやすくなり、HDLコレステロールが減り、non-HDLコレステロールやLDLコレステロールが増えてきます。
1日の目安:純アルコール約20g
日本酒1合、ウイスキーダブル1杯またはシングル2杯(原液60ml)、焼酎原液100ml、ビールなど5%500ml以内です。
【3】喫煙者は、禁煙に挑戦しましょう
喫煙本数が多くなるほど、コレステロールへの悪影響が大きくなります。どうしても止めたくない人や止められない人は、節煙を心がけ、いずれは禁煙を目指してください。禁煙外来や禁煙補助薬も積極的に活用しましょう。
【4】BMI 25未満を維持し、体重管理に努めます。
BMI = 体重kg ÷(身長mの2乗)
自身の体質を加味した増減幅は、20代の体重から10%以内の増減が理想です。ただし、すでに20歳くらいから肥満気味の方や極端に痩せすぎている方は、できるだけ適正体重に近づけるようにしましょう。
【5】食事のポイント
- 1日一回は魚を食べましょう。
- 油脂を使ったおかずは、一食一品までに、野菜を1~2皿添えて。
- 揚げ物以外の和定食を選びましょう。
コレステロールはホルモンや細胞膜の材料になるもので、身体にとって大切な役割があります。
基準値内の数値をしっかりキープしていきたいものです。
この記事を書いた人
小田部 淳子
看護師として外科病棟勤務。その後保健師として銀行の健康管理センターにて産業保健、健康管理センターにて人間ドックおよび健診後の保健指導、その後出版社にて健診後の文書指導、特定保健指導、糖尿病重症化事業、電話およびWeb健康相談、電話相談運営、社内研修企画運営、健康関連原稿の業務を歴任。現在、特定保健指導および原稿の業務に携わっている。
【保有資格および研修終了】
- 看護師
- 保健師
- 養護教諭二種免許
- 一種衛生管理者
- 産業保健指導者、ヘルスケアトレーナー
- ピンクリボンアドバイザー初期認定
- 東京糖尿病療養指導士