更年期の症状~女性編~

更年期は、誰にでも訪れるものですが、女性の場合、おおむね50歳前後の10年間を言います。卵巣から出される女性ホルモン(エストロゲン)は、30代後半から低下し始めますが、40代に入ると低下が顕著になり、50歳前後には閉経を迎えます。女性ホルモンが低下してくると、身体や心にいろいろな不調を感じやすくなります。

今回は、更年期障害の症状および更年期に起こりやすい症状についてご紹介します。

目次

更年期障害に多くみられる症状は?

更年期にみられる症状には、個人差があります。ストレスへの感受性や性格など個人のタイプが影響することもあり、心身の不調の程度は、軽いものから生活が困難になるほど重いものまでさまざまです

症状は大きく分けて3種類あります。

バランスの悪い積み木の画像

(1) 自律神経の症状

のぼせ、ほてり、発汗しやすい、多汗、めまいなどです。いわゆるホットフラッシュです。

(2) その他の身体面の症状

生理が不規則になる、不正出血、おりものが増える、膣の乾き、性交痛、冷え、ドキドキする(動悸)、息切れ、めまい、耳鳴り、頭痛、頭重感、肩こり、腰痛、関節の痛み、むくみ、疲れやすい、皮膚のかゆみや乾燥、肌荒れ、トイレが近くなる、膀胱炎になりやすい、下痢や便秘、太りやすくなる、口が乾くなどがあります。

(3) 精神面の症状

朝までぐっすり眠れない、些細なことでイライラする、気分が落ち込む、不安になりやすい、気力の低下、情緒不安定などがあります。

血液検査や血圧に以下の所見がみられることがあります(健診結果への影響)

血圧が高くなる、コレステロールなどの脂質異常血糖値が上がる骨量の低下などの影響があります。生活に支障がでない程度であれば、生活を見直し、対策を立てることで改善が期待できます。しかし、更年期の症状は多岐に渡るため、他の病気による症状が原因なのか、更年期が原因なのかの確認は必要です。

女性ホルモン(エストロゲン)の働きは?

気持ちを安定させる、髪や肌の状態を保つ、骨を丈夫にする、免疫力を高める、脂質の代謝を良好に保つなど、健康や美容にも深く関係しています。

症状をチェックしてみよう

*簡略更年期指数(SMI)

次の症状について、強い中程度・弱い・無い(0点)のいずれかに丸をして点数を合計します

症状強い中程度弱い無い
(1) 顔がほてる10630
(2) 汗をかきやすい10630
(3) 腰や手足が冷えやすい14950
(4) 息切れ、どうきがする12840
(5) 寝つきが悪い、または眠りが浅い14950
(6) 怒りやすく、すぐイライラする12840
(7) くよくよしたり、憂うつになることがある7530
(8) 頭痛、めまい、吐き気がよくある7530
(9) 疲れやすい7420
(10) 肩こり、腰痛、手足の痛みがある7530

判定:自己採点の評価法

0~25点の方じょうずに更年期を過ごしていて今のところ問題ありませんが、年1回の健康診断を受けましょう。
26~50点の方バランスのよい食事、適度な運動を行い、無理のないライフスタイルを送り、更年期障害の予防につとめましょう。
51~65点の方産婦人科または更年期外来、閉経外来を受診し、薬などによる適切な治療、 生活指導、カウンセリングを受けましょう。
66~80点の方長期間(半年以上)の計画的な治療が必要でしょう。
81~100点の方各科の精密検査を受けましょう。更年期障害のみであった場合は、産婦人科または更年期外来、閉経外来などで長期の計画的な治療が必要でしょう。

*引用文献:小山嵩夫、日本医師会雑誌109:259-263 , 1993

上記の点数は体調によって変化する可能性があります。身体の変化を感じたら、確認するとよいでしょう。

生活面の対策は?

健康的な生活を送るためのセルフケアについて、ご紹介します。

栄養バランスのよい食事をとりましょう

毎食、ご飯やパンなどの主食、肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質、野菜・きのこ類・海藻などの副菜を添えるようにします。また、果物も適量取り入れるようにしましょう。

イソフラボンの含まれる大豆製品は、女性ホルモンのエストロゲンと似たような構造のため、毎日取り入れることで症状の緩和に役立つと考えられています。

カルシウム、ビタミンDは骨の強化につながるため、毎日不足しないようにとりたい栄養素です。低脂肪の乳製品もお勧めです。また、カフェインやアルコールは、控えめにしましょう。

タバコを控える

タバコを吸う方はできるだけ控え、禁煙を検討しましょう。
禁煙外来の利用は、禁煙への近道です。

適度に体を動かしましょう

適度に体を動かすことは、血液の巡りがよくなり、自律神経のバランスを整える効果があります。

女性ホルモンが低下しはじめると太りやすくなるため、体を動かすことで代謝を上げましょう。やや早めに歩くことは手軽で取り組みやすい運動です。目安は、週150分程度です。

この他、スクワットなどの筋力トレーニングも週2回程度取り入れるとより効果があると言われていますので、体に過度な負担の無い、長く続けられる自分に合った方法を見つけることが大切です。

ストレスを上手にコントロールしましょう

過度のストレスは、症状を悪化させる可能性があります。自分の時間を大切に、ゆったりとした時間を過ごすことはお勧めです。ホッと一息つけるティータイム、おしゃべり、ヨガやウォーキング、自然にふれあうハイキング、リラックスできる音楽を聴くのも良いでしょう。

生活のリズムを整え、十分な睡眠を確保

翌日休みだからといって夜更かしをすると自律神経に影響が出やすくなります。日中眠くなる、気力がわかないなどの症状がある方は、睡眠環境や睡眠時間を見直してみましょう。

快適な寝室環境は、適切な温度適度な暗さ静けさ快適な寝具などです。

サプリメントの活用

サプリメントの活用も一つの方法です。カルシウムビタミンDイソフラボンなど、更年期に必要な栄養素を補えます。ただし、医師や薬剤師と相談の上、使用するとよいでしょう。

何科を受診すればよい?

ファイルを持った女医のイメージ

婦人科、更年期外来が専門となります。

医療機関では、ホルモンの数値を検査し、症状に合わせた治療が受けられるため、生活の質がよくなり、不快な症状が緩和される方が多いです。治療内容によっては、副作用や副反応が出ることもあります。そう言ったリスクや不安については、担当医とよく話をして、必要時、安心して治療をうけられるとよいでしょう。

受診時に、最終の生理がいつだったか、またいつからどのような症状があるのか、一番つらい症状は何かを、あらかじめメモなどに記載しておき、医師に伝えられるようにしておきましょう。

気になる症状が続く場合は、我慢せず、医師への相談をお勧めします。

更年期の治療は?

ホルモン補充療法(HRT)

最低限の女性ホルモン(エストロゲン)を補う方法です。更年期障害の第一選択薬です。黄体ホルモンを併用するのが一般的です。個人差はあるもののホットフラッシュなどの自律神経の症状が顕著に緩和されます。

ただし、不正出血、乳がんのリスク、心臓や脳に血栓を起こす可能性が少なからずあるため、専門医の元で、定期的な検査が必要です。また、乳がんにかかったことのある方や血栓症の既往がある方などは、治療を受けられない場合があります。

漢方薬

自律神経のバランスの乱れを回復させることに役立ちます。当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・加味逍遥散(かみしょうようさん)・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を中心に症状に適したものが選ばれます。

向精神薬

ぐっすり眠れない、些細なことでイライラする、気分が落ち込む、不安になりやすいなどの症状には、抗うつ剤、睡眠薬、抗不安剤などの向精神薬が使われます。副作用の少ないほてりや発汗に効果のある向精神薬もあるようです。

人生100年時代が到来します。元気に快適に過ごしていきたいものですね。

この記事を書いた人

小田部 淳子

看護師として外科病棟勤務。その後保健師として銀行の健康管理センターにて産業保健、健康管理センターにて人間ドックおよび健診後の保健指導、その後出版社にて健診後の文書指導、特定保健指導、糖尿病重症化事業、電話およびWeb健康相談、電話相談運営、社内研修企画運営、健康関連原稿の業務を歴任。現在、特定保健指導および原稿の業務に携わっている。

【保有資格および研修終了】

  •  看護師
  •  保健師
  •  養護教諭二種免許
  •  一種衛生管理者
  •  産業保健指導者、ヘルスケアトレーナー
  •  ピンクリボンアドバイザー初期認定
  •  東京糖尿病療養指導士
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