昨今、健康経営など従業員の健康に向けた取り組みの重要度が増し、人的資本といった「ヒト」の技能や能力などを資本として捉える考え方も一般的になってきました。同時に、企業における従業員の健康を管理するための健康管理システムの需要も高まっておりますが、そもそも健康管理システムはどのようなシステムなのでしょうか。労働衛生・産業保健に寄り添い10年以上の経験を有する株式会社エヌ・エイ・シー・ケアが解説いたします。
そもそも健康管理システムとは?
健康管理システム
健康管理システムとは、従業員や職員の健康診断結果などをデータ化し、健康情報を一元的に管理するシステムです。
バラバラに所在する健康情報(健診データ・ストレスチェックデータ・残業時間・面談記録など)をひとつのシステムにまとめることで、企業や団体において、戦略的に健康管理を実現する環境を構築することができます。
また、健診結果を効率的に管理することで、健康診断後の面談などの事後措置業務に時間を充てることができるようになる側面もあります。健康管理システムを活用することで、産業看護職や産業医などの専門職が本来やりたい業務に時間を割くことが可能になります。
混同しやすいシステム
健診管理システム
健診管理システムは、主に医療機関(健診機関)向けで健康診断まわりの業務を管理するシステムのことを指します。健康診断の予約から精算に関する機能が主に備えられています。
WEB予約やWEBで問診回答ができるなど、健康診断そのものを効率的に運営するシステムなので、様々な健康情報の管理がメインではありません。(副次的に健康診断結果を管理する機能を有するシステムもあります)
ストレスチェックシステム
ストレスチェックシステムは、従業員のストレスチェックの実施準備から集団分析などを効率的に進めるシステムです。未受検者へのチェックや実施催促などの煩雑な業務を担ってくれますので、担当者の負担軽減を見込むことができます。
また、一部サービスでは面談やカウンセリングの実施サービスまで含まれるものもあります。基本的にはストレスチェックに焦点を当てたシステムとなりますが、一部の健康管理システムではストレスチェック実施機能を有するものもあります。
人事システム
人事システムとは、タレントマネジメントや給与計算、人事評価などの人事部門の業務効率化をはかるシステムです。
現在、さまざまなシステムがあり、特化型のサービスもありますので、各企業や団体の人事部門の課題を明確にして導入を検討する必要があります。健診結果を管理できる人事システムもありますが、産業保健専門職よりも人事部門スタッフの利用がメインとなり、従業員の健康保持・増進などの産業保健といった文脈とは異なるシステムとなります。
- 健康管理システム : 従業員や職員の健康診断結果などの健康情報を一元的に管理するシステム
- 健診管理システム : 健康診断まわりの予約や精算などの業務を管理するシステム
- ストレスチェックシステム : ストレスチェックの実施から分析までを効率的に進めるシステム
- 人事システム : 人事部門スタッフが利用する人事関連業務の効率化を進めるシステム
健康管理システムでできること
それでは健康管理システムにはどのような機能があるのでしょうか。具体的な機能例をご紹介いたします。
健康情報の一元管理
まず大きな機能のひとつとして、健康情報の一元管理機能が挙げられます。従業員にまつわる健康情報は多岐に渡ります。たとえば下記のような情報です。
- 定期健康診断などの結果
- 特殊健康診断結果(有機溶剤/石綿など)
- 問診回答
- 人間ドックの結果
- ストレスチェックデータ
- 残業時間
- 面談記録
- 就業判定結果
- 産業医意見書 など
それぞれをバラバラに管理している場合や、バラバラのシステムを活用している場合、情報が散在してしまいがちです。それらの情報を一元的にひとつのシステムで管理することで、健康情報をまとめて集積することができます。
また、ここで大事なのは、各社の健康管理システムがどのようなデータを取り込み・集めることができるか、という点です。
通常の健診結果は管理ができるが、特殊健診結果は管理ができない、といったシステムもありますので、健康管理システム選定の際には、どのような健康情報をまとめたいかをイメージしておきましょう。
統一基準での判定
次に健診結果の統一基準判定機能です。
たとえば、従業員が健康診断を受診する健診機関・医療機関が複数ある場合、同じ検査結果数値であっても、各機関によって、健診結果の判定値(診断区分・医療区分とも言う)が微妙に異なる場合があります。
最終的には産業医によって就業判定をすることになりますが、各判定の中身(検査結果数値)を見ないと、判定を誤ってしまう可能性があるので、大変な時間が掛かります。
統一基準判定機能では、各健診実施機関によって異なっていた判定値について、すべて統一の基準で判定を付与することができます。これにより、全従業員を統一基準で管理・判断することが可能になります。
また、独自の判定値を利用している企業が健康管理システムを導入する場合は、統一基準判定の基準値の変更の対応ができる健康管理システムか否かを考える必要があります。
報告書作成の効率化
主な機能の最後に紹介するのは報告書作成機能です。
従業員の健康診断を実施した後、労働基準監督署への報告が必要になります。健診結果がデータで管理できていない場合は、集計するだけでも莫大な時間が掛かってしまいますが、労基署報告集計機能があれば、すぐに集計結果を算出し、事務作業の時間を大幅に減らすことができます。
他にも、健康管理システムで面談記録をつけることで、産業医の意見書がそのまま出力できるような機能を有するシステムもあります。
健康管理システムの活用
健康管理システムを活用することで、できることは何でしょうか。健康管理システムは、導入するだけで従業員の健康が改善される訳ではなく、それをどう活用するかを念頭に置いて導入を検討することが重要になります。
健康状況の把握
まずは健康状況の把握につとめましょう。健康情報をデータ化することによって、数値の傾向などから従業員の健康状況を把握できるようになります。
たとえば、各事業所や各部署で、数値の把握ができますので、血圧の高い部署・血糖値の高い部署・BMIが高い部署などの傾向が見て取れるようになります。
職種的な特性(外回りの営業職はBMIが低いが、デスクワーク中心の職種はBMIが高くなりがち、等)や地域的な特性(味が濃い地域は血圧が高くなりがちで、車通勤が多い地域はBMIが高い、等)を把握することで、健康増進施策のヒントにすることができます。
紙で健診結果を管理している場合は、個々人の数値を見たハイリスクアプローチになりますが、健康管理システムでデータ管理をすることで、効果的なポピュレーションアプローチの立案が可能になります。
健康情報の複合的な分析
つぎに、健康情報を一元管理しているからこそ、複合的な分析が可能になります。
残業時間の多い部署の健康課題の傾向を掴んだり、ストレスチェックデータと健診結果の相関を見つけやすくなったり、健診結果だけでは見えてこない高度な分析ができるようになります。また、面談記録との相関も見て取れるようになりますので、対策立案にも役立ちます。
以上のように、データの把握・管理・抽出がしやすいシステムを選定することも健康管理システム導入の際のポイントになります。
導入形態の違い
最後にシステムの導入形態についてご紹介します。それぞれにメリット・デメリットがありますので、健康管理部署だけではなく、情報システム部署にも確認しながら各社の事情にあったシステム導入を検討するようにしましょう。
クラウド
昨今、健康管理システムは「クラウド」タイプが主流になっています。クラウドはGoogle Chromeなど各種ブラウザからアクセスすることができる仮想サーバーに、システムを置く形での導入になります。
メリット
- 導入費用が比較的安価
- ベンダー側でバージョンアップなどの対応をしてくれる
- 社内ネットワーク以外からでもアクセスができる
デメリット
- 保守費用が比較的高価
- 健康情報を社外サーバーに置くことになる
※原則、クラウド環境であってもセキュリティは担保されておりますが、
機微な情報を社外に置けない方針の会社もあります。 - 独自運用をするためのカスタマイズができないシステムが多い
オンプレミス
オンプレミスタイプは自社内のサーバーにシステムを置く形での導入になります。社外にサーバーを置かない形なので、クラウドタイプとは運用が異なります。
メリット
- 保守費用が比較的安価
- 機微な情報を社内に置いておくことができる
- 比較的カスタマイズしやすい
デメリット
- 導入費用が比較的高価
- 社内のシステム要員などのリソースが必要
(バージョンアップの対応を各社で行わなければならない) - 社内ネットワーク以外からはシステムにアクセスができない
このように、それぞれの導入形態によってメリット・デメリットがありますので、各社の状況・事情を考慮して検討する必要があります。中にはクラウドタイプ・オンプレミスタイプどちらの導入形態でも提供が可能な健康管理システムもあります。情報システム部門の確認も必要になりますので、まずは導入形態が柔軟なシステムを探してみるのもひとつの手です。
まとめ
~システムを活用して人的資本経営/健康経営を戦略的に進めましょう~
以上のように健康管理システムを活用することで、従業員の健康管理の効率化から健康増進施策のヒントまでをカバーすることができます。そして、健康管理システムはあくまでも、健康管理の「環境」を整えるためのツールです。
分析機能を有する健康管理システムもありますが、自社の状況をしっかりと把握した健康管理部門がデータの管理をしやすいシステムを活用することで、各社にあった人的資本経営や健康経営施策に取り組むことができるといえます。
よって、必ずしも多機能のものを選ぶ必要はなく、健康管理部門が本当に使いやすく、使いこなしやすいシステムであることが重要です。
かんたん、やさしい健康管理システム「Be Health(ビーヘルス)」
株式会社エヌ・エイ・シー・ケアは健康管理システムBe Healthをご提供しております。柔軟な導入形態やカスタマイズの対応など、産業保健に長年取り組んできたノウハウとナレッジで、各社の産業保健業務をスムーズに運用できる環境を構築します。
必要最低限の機能で、データの取り扱いをしやすい特長を持っているので、健康管理部門の課題解決におすすめの健康管理システムです。産業保健業務に少しでも課題を感じておられましたら、お気軽にお問い合わせください。
健康管理システム「Be Health」の機能をまとめたページもあります
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