健康経営についての基礎知識

健康経営®の実現を目指すために必要な基本的な情報をまとめてご紹介します。健康経営とは何か、メリット・デメリット、具体的な取り組み、実践方法、顕彰制度、申請フロー、認定状況についてご説明します。

健康経営についての基礎知識としてご活用ください。

※健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

目次

健康経営®とは

「健康経営®」とは、従業員の健康を経営戦略として取り入れ、計画的に取り組むことを指します。企業の理念に基づいて従業員の健康に投資を行うことが、組織全体を活性化させることにつながり、結果的に業績向上や株価向上につながることが期待されています。

NPO法人健康経営研究会の登録商標

「健康経営」という言葉は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。ホームページやパンフレットなどの媒体に「健康経営」を掲載する場合、あらかじめ健康経営研究会へ連絡する必要があります。

また、「健康経営®」と表示する際は、最初にこの言葉が登場する箇所にRマークを付け、文書内に「健康経営®はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。」という注釈を入れる必要があります。
詳しくは以下のページをご覧ください。

登録商標の使用について|健康経営研究会

健康経営のメリット

健康経営を実施することで得られる主なメリットとして、「業績や生産性の向上」「企業のイメージ向上」「離職率の低下」の3点をご紹介します。 なお、「健康経営優良法人」の認定を取得すると、金融機関から金利の優遇を受けられたり、医療費が減少することによる健康保険料の負担を軽減できたりするなどのメリットもあります。

業績や生産性の向上

健康経営により、従業員の身体的および精神的な健康度が向上し、病気による欠勤の減少や、なんらかの体調不良があるまま働いている人の割合の減少という効果が期待できます。その結果、従業員は日常の仕事を集中して効率よく行えるようになり、全体の生産性が高まります。

健康状態が良い時と悪い時の「時間当たりの成果」は比較するまでもなく、健康状態が良い方が社内コミュニケーションも活発になります。健康な状態では、仕事の効率だけでなく、チームワークも向上し、企業の業績の向上にもつながります。

企業イメージの向上

健康経営を実践することで企業のイメージが向上します。

また、『健康経営銘柄』や『健康経営優良法人』といった認定を取得することにより、客観的に見たときの企業の信頼度が高まり、採用活動での応募者数の増加も期待できます。昨今では求職者は企業の従業員の健康への取り組みに注目しており、健康経営は企業イメージを向上させる効果的な手段です。

認定ロゴマークでアピール

健康経営優良法人に認定されると、「健康経営優良法人ロゴマーク」を使用できるようになります。このロゴマークを活用して組織内外にPRすることで、従業員、消費者、求職者、投資家からの評価が高まります。

特に、大規模法人部門の上位500社は「ホワイト500」、中小法人部門の上位500社は「ブライト500」として、さらに区別されたロゴマークを使用でき、より効果的にアピールすることが可能です。

離職リスクの低減

健康経営を行うことで、従業員の満足度や会社に対するロイヤルティが向上し、その結果離職リスクが減少します。また、従業員の心身が健康になることにより、メンタルヘルス不調等に端を発した休職率や退職率を低下させることができることも期待できます。

健康経営にデメリットはある?

健康経営は多くのメリットをもたらしますが、実施にあたってはいくつかのデメリットや課題も存在します。
以下に主な点を挙げます。

初期投資の必要性

健康経営を始めるには、福利厚生の充実やウェルネスプログラムの開発、従業員教育の拡充などの初期投資が必要です。特に中小規模企業にとっては、これらのコストが負担となることがあります。

従業員の抵抗感

健康経営推進の旗印のもと、従業員の健康づくりのために行なっている施策であっても、従業員の自発的な参加を得ることが難しい場合もあり、その結果施策の効果が薄れることがあります。

特に、禁煙やダイエットを目的としたプログラムは強制的に実施してしまうと従業員の不満を招きやすくなってしまいます。従業員が自発的に取り組んでくれるために、施策のメリットを明確に伝え、従業員が施策を自由に選べるようにすることも有効な方法の1つです。

長期的な視点の必要性

健康経営の効果は短期間では見えにくく、その成果を評価するためには長期的な視点が必要です。これが、経営層や従業員のモチベーション維持を難しくすることがあります。また、健康経営の成果は数値化しにくく、例えば離職率や欠勤率の変動が健康経営によるものか他の理由によるものかの判断も難しい場合があります。そのため、効果を正確に測定するには、半年や年単位での中長期での評価を行なうことが重要であると言われています。

健康経営は一度の取り組みで完結するものではなく、継続的な管理と改善が求められます。これには定期的な評価と施策の見直しが必要であり、持続的な労力とコストが伴います。そのため、負担が少ない活動から始め、徐々に健康経営の基礎を固めていくことが推奨されます。

これらのデメリットや課題を理解し、適切に対処することで、健康経営の持続的な成功を目指すことが重要です。

健康経営、まず何をする?

健康経営を始める第一歩は、その実施を宣言して明文化することです。企業のトップが健康経営を重要な経営課題の一つとして位置づけ、具体的な施策を経営理念に基づいて発表します。このプロセスを社内外に伝えることで、健康経営の取り組みが企業全体の共通の目標であることを周知させていきます。

取り組む手順(実践方法)

健康経営に取り組む際には、計画的で体系的なアプローチが必要です。
効果的な健康経営を実施するための、一般的な手順を説明します。

【STEP 1】経営層のコミットメント

健康経営を成功させるためには、経営層の強い支持とコミットメントが不可欠です。企業のトップが健康経営を経営戦略の一部として位置づけ、全社的な取り組みであることを宣言します。

【STEP 2】健康経営方針の策定

健康経営の具体的な目標と方針を明文化します。これには、従業員の健康をどのように促進するか、どの健康問題に重点を置くかなどの詳細が含まれます。

【STEP 3】組織体制づくり

健康経営方針を策定したら、健康経営のさまざまな活動を推進するための組織体制を構築します。継続的な取り組みを行なう必要がありますので、健康経営推進の専任の社員を置く、各部署からも担当者を任命するなど、全社の取組みとして確実に施策を実行できる組織を作ることが重要となります。

【STEP 4】従業員の健康状態の把握

従業員全員に対して行なう健康診断の結果やストレスチェックの結果等を確認し、従業員の健康状態を把握します。これにより企業としての健康課題を把握した上で、リスクの高い従業員に対して必要な健康支援を計画することができます。

【STEP 5】施策の決定と実行

把握した従業員のデータに基づき、運動プログラム、栄養改善プログラムなどの施策を決定し、実行します。また、並行して健康に関する教育や啓蒙活動を行い、従業員が自己の健康を管理する能力を高めることも重要です。これには、健康セミナーやワークショップを開催するといった方法があります。

【STEP 6】評価とフィードバック

実施した施策の効果を定期的に評価し、必要に応じて施策の見直しを行ないます。従業員からのフィードバックも積極的に取り入れ、施策の質を向上させます。

【STEP 7】継続的な改善

健康経営は継続的なプロセスです。新たな健康情報や技術の進展に応じて、健康促進プログラムを更新し、継続的に改善を図ります。

これらのステップを経て、健康経営を組織全体の文化に根付かせ、従業員の健康を長期的に保持・向上させることを目指しましょう。

健康経営に関連する顕彰制度

健康経営に関連する顕彰制度については、経済産業省は2014年から「健康経営銘柄」として企業を選定しています。さらに、2016年には「健康経営優良法人認定制度」を始め、2020年からは大規模法人部門の中で上位500社を「ホワイト500」として特別に認定しています。

これらの顕彰制度により、健康経営の取り組みがより注目され、企業にとっても実利のある活動として認識されるようになっています。

健康経営銘柄


「健康経営銘柄」とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で、特に優れた健康経営を実施している上場企業を選定する制度です。この制度は、ESG投資や企業価値の長期的な向上を重視する投資家にとって魅力的な企業を紹介し、さらに広く健康経営の取り組みを促進することを目的としています。

主な選定基準

経済産業省が行う『健康経営度調査(※1)』の結果に基づき、健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人の上位500位以内の上場企業から、基本的に各業種から1社ずつ(※2)選ばれています。

  1. 重大な法令違反等がない。
  2. 健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人の上位500位以内である。
  3. ROE(自己資本利益率)の直近3年間平均が0%以上または直近3年連続で下降していない企業を対象とし、ROEが高い企業には一定の加点を行う。
  4. 前年度回答有無、社外への情報開示の状況についても評価し、一定の加点を行う。

※1… 企業等が従業員の健康管理を戦略的に行う健康経営の取組状況に関する調査。
※2… 1業種1社に加えて、下記選定基準を加味した上で各業種の最高順位の企業の平均より優れている企業についても、健康経営銘柄として選定。

選定には健康経営度のほか、自己資本利益率(ROE)、前年の回答状況、外部への情報開示の程度が評価されます。また、業種内で平均よりも優れた企業も健康経営銘柄として認定されています。

出典:経済産業省|「健康経営銘柄2024」に53社を選定しました!(2024年3月11日)

https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240311003/20240311003.html

健康経営優良法人(大規模法人部門)

健康経営優良法人制度では、企業は従業員の数や資本金の額に基づいて大規模法人部門と中小規模法人部門に分類されます。もし従業員の数が大規模法人部門の基準を満たしているが、資本金が中小規模法人部門の基準に当てはまる場合、企業は自由にどちらかの部門を選んで申請できます。

ホワイト500

ホワイト500は、健康経営優良法人制度の一環で、大規模法人部門の中から上位500社のみが認定される制度です。認定を目指す企業は、制度の内容をしっかりと理解し、適切な対策を準備することが重要です。

大規模法人部門と中小規模法人部門のどちらに該当するのか、従業員数等の申請区分については経済産業省で案内がされています。こちらをご覧ください。【部門の区分について】PDFファイル

健康経営優良法人(中小規模法人部門)

中小規模法人部門は、従業員数や資本金が一定基準以下の企業向けのカテゴリです。政府は、健康経営を全国的に広めるために、中小企業の取り組みが非常に重要であると考えています。

ブライト500

ブライト500は、健康経営優良法人の中小規模法人部門で認定された企業の中から、特に優れた健康経営の取り組みを行っている上位500社に与えられる称号です。この称号は、健康経営を積極的に推進している企業を表彰するためのものです。

申請方法・認定フロー

健康経営優良法人に認定されるには申請が必要です。健康経営優良法人申請の詳細についてご覧ください。

申請から認定までの流れ

引用元:【経済産業省】申請から認定までの流れ

健康経営銘柄の選定フロー(東証一部上場会社)

  1. 健康経営度調査の実施(経済産業省による「従業員の健康に関する取り組みについての調査」に回答)
  2. 健康経営度が上位20%の上場企業を候補として選定
  3. 東京証券取引所において財務諸表スクリーニングを実施
  4. 経済産業省及び東京証券取引所が共同で選定

健康経営優良法人の認定フロー(ホワイト500・大規模法人部門)

  1. 健康経営度調査の実施(経済産業省による「従業員の健康に関する取り組みについての調査」に回答)
  2. 認定審査
  3. 日本健康会議において認定

健康経営優良法人の認定フロー(ブライト500・中小規模法人部門)

  1. 加入している保険者(協会けんぽ等)が実施している健康宣言事業へ参加
  2. 自社の取り組み内容を確認し、中小規模法人の認定基準に該当する具体的な取組を申請書に記載
  3. 日本健康会議認定事務局へ申請
  4. 認定審査
  5. 日本健康会議において認定

認定状況

認定状況について年度ごとに公開されています。認定状況の一覧がわかる事務局ポータルサイト(ACTION!健康経営)のページをご案内します。

外部サイトへのリンクのため、別ウィンドウで開きます。

2024年(健康経営銘柄2024・健康経営優良法人2024)

2023年(健康経営銘柄2023・健康経営優良法人2023)

健康経営の事例集・施策紹介

中小企業における健康経営の認知度向上、取り組み促進を図るため、経済産業省から「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」に認定された法人の取り組み事例集を公開しています。その資料をご紹介します。

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